第52話 メインに向けて

「ふー……おなか、いっぱい……」

「あー……なんかもうこれで満足ですぅ……」


 真菜と緋依が、それぞれ幸せそうに零す。


「もう……メインは料理ってわけじゃないのに……」


 結衣が呆れながら言うと、せーちゃんも会話に入ってくる。


「まったく、だらしないわねぇ。これぐらいの料理いつも食べてるから私には造作もないけど」

「あ、あはは……せーちゃんと比べちゃダメでしょ」


 真菜と緋依はお腹がいっぱいで動けないと言っていたので、先にお母さんとせーちゃんと結衣の三人で温泉を堪能することにした。


「真菜ちゃんと緋依ちゃん大変だったみたいね」

「そうなんだよね……ついつい食べすぎちゃったみたいで……」


 お母さんはその時ちょうどお手洗いに行っていたので、二人の一部始終を見ていないのだ。


「まったく……これだから庶民は……」

「なんかせーちゃん最近セレブぶってきてるよね……」


 出会った時はそれほどでもなかった気が……と結衣が物思いにふけっていると、


「着いた……!」


 お母さんの甲高い声によって、その思考は掻き消された。

 目の前には『女』と書かれた暖簾が見える。


 さあ、ここからが本当に本当のメイン――温泉だ!

 結衣はそう息巻いて、扉を開けた。

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