第48話 手を取り合って進む

「だからね、あなたには私がいる。あなたはもう、ひとりじゃない」


 緋依の見開いた眼から、大量の水の粒が溢れる。

 緋依がずっと探していた――探したくても探せなかった――大切なもの。

 結衣が……ついにその、大切なものになった……気がする。


「一緒に空を舞おう。遠くへお出かけしたり、遊んだりしよう。一緒に勉強しよう。一緒に戦おう。それと――」


 一呼吸置き、最後に一言。


「――友達になろう!」


 ☆ ☆ ☆


 かくして、緋依と友達になった結衣は、一緒に手を繋いで笑い合う。

 さざ波の音が心地よく鳴り響く。太陽が心地よく照らし出す。


 緋依にもう、迷いも翳りもなかった。

 結衣も、全てやり切ったと安堵している。


「もう帰ろっか」


 結衣がそう言うと、緋依は頷く。


「じゃあ、変身しますかぁ?」


 ガーネットは、そう訊いた。


「うん! お願い!」

「……♪ 分かりましたぁ! では、行きますよぉ」


 ガーネットのその一言で、結衣は一瞬で変身させられる。


 この時の結衣は、とても重大な事を見落としていた。

 だが、結衣がそれに気付くことはついぞなかった。


「……ふはははは」

「ん?」


 結衣は小さな音に振り向く。

 だが、そこには何も無い。


「……どうしたの?」


 緋依が結衣に、怪訝そうに問う。


「ううん。なんでもなーい」


 結衣は何かを感じつつも、明るく言い放った。

 心配をかけるわけにはいかないし、音がしたのは気の所為かもしれない。


 そう結論づけて、結衣たちは空へと羽ばたいた。

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