第21話 あの子のために
「決めた。私、真菜ちゃんの所へ行く」
数時間か、はたまた数秒しか経っていないのか――
時間経過は分からないが、突如口を開いて突拍子もないことを言い出した結衣に、二人の驚愕の視線が注がれる。
「え、ちょ……え??」
「結衣様……それ、本気ですか……??」
二人は困惑に染まった表情で、結衣の顔を見る。
だが、結衣の顔を見て、困惑が確信に変わったのか――薄く笑って、今度は普段通りに。
「分かった分かった。じゃ、行っておいでよ。私はここで待ってるからさ」
「マスターがそう決めたのなら、私はそれに従うまでです!」
手を振って送り出そうとしてくれる友の姿と、何処まででも付き添ってくれそうなパートナーの姿に。
結衣は泣きそうになりながら、必死に平然を装う。
「ありがとう! せーちゃん、ガーネット――じゃあ、行こうか!」
結衣がそう言うと、ガーネットは結衣の近くまで泳ぐように漂うと、
「ええ、行きましょう」
ニッコリと元気よく笑った気がして――結衣は、幻影を視た。
結衣と同じぐらいの歳の、底抜けに明るい少女の姿を――……
――だが瞬きをしたら消えてしまい、もうその少女の姿を視ることは出来なかった。
「……結衣様?」
ガーネットの言葉に、ハッと我に返る。
こんな事に心を奪われている場合じゃない。
結衣はこの事を一旦置いておいて、目的地の方へ視線を変える。
「真菜ちゃん、待っててね。必ず、あなたを……」
そう静かに零すと、ガーネットを掴む。
すると、結衣の周りが煌びやかに光り出す。
そして普段着から、ひらっひらの可愛くて短いスカートが現れ。
背中と脇が服から覗く――一歩間違えたら露出狂と思われ、警察のお世話になりそうな魔法少女衣装に変わる。
そして何やらキラキラした謎の光に包まれて、結衣は空を飛ぶ。
笑顔で手を振り、見送る友人に――結衣も手を振り返して目的地へ進む。
飛行魔法をかけながら、さらに増幅魔法でスピードを上げる。
――一秒でも速く、あの子に逢うために。
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