第14話 ステッキをぶん殴ろう

「結衣様って――実はモテます!?」

「ほぇ!? いきなりなんの話!?」


 魔法の扱い方について学んだ翌日。

 気持ち良く目覚めたら――突如降って湧いたモテ疑惑。

 結衣はそれについていけずに混乱していると――


「だって! ピンクのグラデーションがかかった雪のように白い髪! 全てを包み込む包容力ある翠の瞳! 短いスカートの中から覗く艶やかな太もも! そして、幼い少女とはとても思えぬわがままボデー!! ……モテずして何をすると!?」


 ガーネットは結衣の身体を舐め回すように見ながら、演説をするように、力いっぱい声を上げる。

 近所迷惑じゃないだろうか……と不安になりながらも、結衣は呟くように言う。


「あー……えっと、褒めてくれる? のは嬉しいんだけど……突然なに??」


 まだ寝起きで頭が回ってないせいか、いつも以上にガーネットがうざく感じる。

 ガーネットは結衣の問いを聞いて、目をぱちくりとさせたような様子になる。


 そして、ガーネットは毅然と――いつものように言い放つ。


「いえ、魔法少女ってモテ要素も必要だと思いましてぇ」

「……どんどん魔法少女のイメージがおかしくなってくよ……」


 結衣は大声でツッコむ気力もなく、独り言のように零す。

 というか別段、それは大した問題ではなかった。もっと大きな問題が結衣にはあり――


「ていうか! 何この格好!」


 そう、目覚めたら本来パジャマ姿であるはずの結衣の格好は――

 魔法少女姿に、変身させられていたのだ。


「展開についていけないんだけど!?」


 ようやく本調子を取り戻し、いつもの様なツッコミが出来たが、結衣は全く嬉しくない。

 とりあえずこの状況を説明して欲しい。

 そう“願う”結衣にガーネットは――


「特に理由はありませぇん!」


 ……と、ドヤ顔で語ったような気がしたので、結衣はガーネットをグーで殴った。

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