第13話 魔法少女っぽくなってきた!

「――増幅ブースト!」


 そう言い放つと、物理限界を突破するほどのスピードが出る。


 周りを視認出来ないほどのスピード。

 しかし、追えないほどではない。

 そして、どこからともなく木々の間から矢が放たれる。


「――防壁バリア!」


 結衣をまるごと包み込むような――

 ドーム状の、どこから攻撃が来ても防げるほど完全無欠の防壁が出来る。

 矢もそれに弾かれて、行き場を失い、地面に落ちる。


「全力全開!! ――大砲バング!」


 鉄砲玉のようなオーブ、光の――魔力の塊が繰り出される。

 すると、周囲の木々を溶かし、代わりに更地ができていた。

 そして――


「――再生リバイバル


 結衣は目を閉じ、ステッキ――ガーネットを天に掲げる。

 すると、あら不思議。溶かされた木々が元通り修復されていきましたとさ。


「うっふっふ。だいぶさまになって来たんじゃないですかぁ?」

「そ、そう? なら、練習したかいあるよね!」

「やっぱり教えたかいがありましたねぇ。魔法少女っぽくなってきましたよぉ」

「うーん……強くなったって言ってほしいかな」


 今回の練習でだいぶ自信が付いてきて、誰からでもガーネットを守れるのではないか。

 そうやって、結衣は自惚れのような思考回路になる。

 その時、パチパチと手を叩く音が聞こえてきた。


「わー……! 私と戦った時、より……威力……上がって……ない? 技の、精度も……高いって、言う……か……」


 そこには、本人より嬉しそうに拍手する真菜の姿がある。

 真菜は、すごくいい笑顔で結衣を褒め称えた。


「いやぁ、そんな……首の皮一枚繋がった程度だよ……」


 と、一応謙遜はしたが、結衣はニヤニヤ気味悪い笑顔を浮かべている。

 しかし、思い上がってはダメだと即座に首を振る。


「私が指導して上達させたんですからねぇ? 私を褒め称えてくださいませぇ!」

「え……? あ、うん……ガーネット、も……凄い……ね」


 結衣の時と違い、苦笑いでガーネットに応じた真菜に、結衣はものすごく同情した。

 ――ガーネットに絡まれるのはすごくめんどくさいだろう、と。


「あー! 結衣様今私をめんどくさいと思いましたねぇ!?」

「なんでそれを――じゃなくて! 私の心読まないでよ!」

「そんなんしてませぇん。結衣様のことは顔を見ればだいたい何考えてるか分かるんですぅー」

「エスパーなの!?」


 再度騒ぎ出した結衣とガーネットを見て、真菜は今度は笑ってこう言った。


「二人、とも……すっごく……楽し、そう!」


 誰もが見惚れる笑みで、真菜は結衣たちを見据える。

 そして結衣とガーネットは顔を見合わせ、真菜に向かって同じような笑みで応えた。


 ☆ ☆ ☆


 ――次なる敵が、こちらに向かって来ていることに……気付かずに。


 「うふふ。あたしの願いを叶えたい。その為なら――手段を選ばずにあの子に勝つわ」


 不敵な笑みで、不気味な笑い声を響かせる。

 その目には、確信さえ――浮かばせて。

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