第8話:ジョブの存在
「いやいや、助けてくださいよ、アズキさーーーん!」
「面倒くさいニャー。あちきはヒト様の恋愛沙汰に巻き込まれたくないと言っているんだニャー」
誰が覗きにくるかもわからない牢屋の中で、
「僕としてはルナさんみたいな可愛い女性に襲われるのは男冥利につきます。しかしですね? もしもですよ? 僕のが起たなかったら、ルナさんに恥をかかせてしまうのが嫌なんです!」
「おお……。なるほどなのじゃ……。ほんにヤマミチは優しい男じゃな。ヤマミチのが起たぬのは、わらわのせいじゃと思わせたくないわけじゃな!?」
ルナ=マフィーエがうんうんとまるで何もかも悟ってくれたかのようにコクコクと首を縦に振ってくれている。
「そ、そういうことです。ですから、僕はムードたっぷりの寝室でルナさんとひとつになりたいなあと願うばかりなのです」
「あい、わかったのじゃ! では、わらわもそういう場がくるまでは、なるべく我慢させてもらうのじゃっ!」
何がわかったのだろうか……と心配になる
『ハメる前にハメられた』。これは彼の人生において、よく起きる事象であった。ノブレスオブリージュ・オンラインのGMに就任したのも、自分からやりたいと名乗りでたわけではない。
しかし、それを打ち破るかのように、ルナ=マフィーエはガンガンと
「何を笑っているニャン?」
「あれ? 僕、笑っています?」
「笑っているニャン」
「よくはわからないですが、僕はこの状況を楽しめているみたいです。いやあ、人生は楽しまなくては損だと言いますが、牢屋に閉じ込められてまで笑えますかね?」
「そんなの知らないニャン。でも、人生楽しまなきゃならないのは間違いないニャン。ヤマドー、あちきはそろそろ牢屋に入っているのも飽きてきたニャン。どうにかしてほしいニャン」
「魔法とかでドカーンと牢屋の鉄格子を吹き飛ばせれば良いんですけどねえ?」
「それなら無理じゃな。わらわは
「そうなのよニャー。あちきも魔法は少々使えるけど、そもそもこの牢屋に入れられてから、思うように自分の中の魔力を上手いこと扱えないんだニャン。まあでも、魔力を使えたところで一人前・
ノブレスオブリージュ・オンラインのジョブがこの世界に存在する。それを二つ名の如くに言いのける2人が証明しているといっても過言ではなかった。ここで新たな疑問が湧く。ならば、
「ヤマミチは見たところ、戦士系列に思えるようじゃが、その身に宿る膂力で鉄格子をどうにかできないのかえ?」
「そう、あちきもそれを期待しているんだニャン。ささ、ヤマドー。男は度胸だニャン。やってみてほしいニャン」
「ふぐぐぐ! うぎぎぎ! うごごご! って、できるわけないでしょっ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます