第2話:キツネ耳
「娼……館? こんなかやぶき屋根の平屋建てが娼館にはとても見えませんけど?」
しかしながら、娼館と言われたら、それは強く否定せざるをえない造りであった。
「なんじゃ? さっきまでぴーちくぱーちくとさえずっておったと思えば、今度はだんまりかえ? まあ、それも致し方なかろう。そこで眠っている小娘と違って、わらわはプロポーションには自信があるからのぅ?」
狐耳の娘は麻製のクリーム色のぶかぶかのローブ越しに、豊満な胸を下から支えるように胸の前で腕組をする。ゆったりとしたローブでもその大きさがわかる以上、
クークーと寝息を立てている猫娘は胸にサラシを巻いていた。そちらは推定BからCカップとほどと考える
日頃、おっぱいに貴賤は無いと
(金髪にケモ耳、そしてぶかぶかのティーシャツ、いやローブですけど……。さらにはその服の上からもわかるほどの大きさとくれば、手のひらにすっぽり収まるサイズが好きな川崎くんだって鼻血噴水大御礼ですよ!?)
「まあ、何はともあれ、いくら女性が2人、同じ牢に居るからといって、やましいことは考えぬことじゃな。さもなくば『へし折る』のじゃ!」
へし折ると力強く言われたために、
「存外、きさまは面白い奴なのじゃ。わらわの嗜虐心がくすぐられてしまうのじゃ。どれ……。この牢から無事に出られたら、わらわと町の宿屋でしっぽり遊ぶかえ?」
「いやいやいや。僕にはキレイな嫁と可愛い娘がいるんですっ! 僕は一夜の火遊びと言えども、浮気はする気はないんですぅ!」
「なんじゃ、嫁だけでなく、コブ付きじゃったか。興が削がれたのじゃ。わらわも妻子持ちに手を出す気にはならんのじゃ。厄介ごとに巻き込まれるのはこの牢に入れられた1件だけで、お腹一杯なのじゃ」
「え? 厄介ごと?」
「わらわの名前はルナ=マフィーエ。遠くイングランドの地からドーバ海峡を渡り、このフランスの地へと足を踏み入れたのじゃ。悠々自適に旅を続けてきたのじゃが、ここまで来て、路銀が尽きてしまったってのう?」
しかし、いざ実行に移そうとしたら、彼女が言う通り、厄介ごとに巻き込まれて、この牢に囚われることになったのであろうと推測できた。そのため、
「添い寝サービスをしようとしたら、本番をしたいと言われてしまってな? それを断ったら、貴族のドラ息子が騒ぎたてたのじゃ。まったく、親が寝室に飛び込んできて、そのドラ息子がわらわのことをイングランドのスパイじゃとわけのわからぬ言い訳をじゃな……」
ルナ=マフィーエの身上を察しかけていた
「そんな古典的な言い訳が通じるところが中世の恐ろしさなのでしょうかねえ?」
「『中世』という言い方は釈然としないのじゃが? まるでわらわを卑下しているかのように聞こえるぞ? まあ、それは置いておいてじゃ……。ここの家に集まっている貴族連中は何かを企んでいるようじゃ。それで、わらわをスパイだと思い込んでしまったようじゃな」
スパイと疑われたのは
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