第20話 縁01
縁は不思議に絡み合う。探し求める人が向こうからやって来る……そんな偶然に春馬は目を見張った。
「小夜さん……?」
「あ、春馬!!」
春馬に気づいた小夜が慌てて駆け寄ってくる。
「スマホくらいチェックしてよ!! 何度も電話したんだよ!!」
「そ、そうなの……?」
春馬がスマホを確認すると小夜からの着信があり、『春馬、今どこ?』『大丈夫なの?』というメッセージも届いていた。
「連絡がつかないから家まで来たの。心配かけないでよ……バカ」
「ご、ごめん……」
小夜は眉を寄せて不安げに春馬を見る。春馬は困惑した。自分が引き起こしたのは暴力沙汰だ。こんな時、どんな顔をして、どんな言葉を並べれば良いのか全くわからない。
「春馬、停学になったって聞いたけど……」
「え? あ……うん……」
春馬は俯き、か細い声で答える。小夜は春馬の
「喧嘩……したの?」
「……うん」
「そっか……」
小夜は詳しく聞こうとしなかった。変わりに、春馬の拳頭をそっと手に取って見つめる。
「あんまり……無茶しちゃダメだよ……」
「……」
優しく囁かれた言葉と手の先から伝わってくる感触に、春馬の戸惑いは大きくなった。小夜の横顔を見ていると、「何があったの?」と問い詰められている感覚になる。良心の
「小夜さん」
「ん?」
「話を……聞いてくれるかな?」
「……うん」
「ありがとう……あ、飲み物でも買う?」
「いいよ。こんな時に気を使わないで」
小夜は春馬を気づかうように笑顔をつくる。そんな小夜を見ていると、春馬は暗い心に一瞬の晴れ間が差す気分になった。
「え、遠慮しないで。小夜さん、僕も何か飲みたいんだ……アイスの方がいいかな……?」
不器用に言葉を並べながら、春馬は小夜をコンビニへと誘った。
× × ×
コンビニで飲み物を買うと、春馬と小夜は先日出会った公園へ向かった。夕方の公園はとても静かで人影は見当たらない。傾いた夕日に遊具の長い影が差している。二人は先日の夜のようにブランコへ腰を下ろした。
「あ、あのね。小夜さん……」
春馬は学校での
「僕は、怒りを抑えられなかった……暴力的で最低なヤツだ」
話し終えると春馬はブランコのチェーンを強く握った。今さらながら後悔の気持ちが沸き起こり、胸が苦しくなる。
──こんな話、するべきじゃなかった。きっと、小夜さんに軽蔑される……。
苦悩に歪む春馬の横顔を小夜は黙って見つめていた。その脳裏に
禍津姫の力を宿した春馬が何の
ただ……。
暴力で一番怖いのは、暴力を振るうことに慣れてしまうことだ。今の春馬はギリギリの所で良心がブレーキをかけている。
もし、このまま春馬が暴力に身を任せるなら……春馬は人間では無い何かになってしまうのではないか? 小夜にはそう思えてならなかった。それでも良いの? と小夜の心は強く語りかけてくる。
「春馬は最低なんかじゃないよ……」
「え?」
小夜がポツリと呟くと春馬は少し驚いた様子で顔を向けた。
「リングを奪われそうになって、暴力を振るわれて、妹を侮辱されたんでしょ? 怒って当然だよ」
「でも……」
「確かに、春馬のやったことは褒められないよ。それでも……今、春馬は自分の行為を反省して見つめ直してるでしょ? なかなかできることじゃない」
小夜はブランコから立ち上がり、以前のように鉄柵に寄りかかった。
「だから……これ以上の仕返しは考えちゃダメだよ」
「えっ!?」
「あ、今のは春馬に言ったわけじゃないよ」
「??」
春馬は小夜の言っている意味がわからなかった。
「……
小夜は春馬の瞳を見つめながら言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます