ボクはフラグを踏む?
「ここまでくれば、勝ち確だね! もうなにもこわくない!」
厄介な生徒ゾンビ二人を廃し、笑みを浮かべる
「ヨーコ先輩、油断しないでください! っていうかそれ怪物相手には危険なフラグです!」
「もー。福子ちゃんは心配しすぎ。ボクがそんな安易なフラグ踏むとか――」
壁を突き抜けて
「――ナイって!」
だが飛びかかってくる前にチェンソーザメにダッシュし、通り抜け様にバス停を振るう。突撃してくるタイミング、角度、そして速度。全てが分かっているのならカウンターは容易だ。ブレードマフラーで追撃を加えながら、迫ってくる魚ゾンビの攻撃を受け流す。
元よりチェンソーザメの厄介なのは魚ゾンビとの連携と、超強い斬撃ダメージにすぎない。逆に言えば、その対策さえしっかり取れれば組みしやすい相手なのだ。
「あとは隠れている軍人くんぐらいかな。それも見つけ次第倒してしまえばいいし。ま、いろいろあったけどボクにかかればこんなものさ」
「ふざけるなぁ! ミ、ミーのパーティーを壊滅させてただで済むと思うなよ!」
いまだに腰を抜かしている十条が
「はぁ? そっちが勝手に防御に回って崩壊したんじゃないか。ボクが何したっていうのさ」
「ユーが指示を出さなければ、困惑することはなかったんだ! ミーの完璧な指揮能力で持ち直せる予定だったのに!」
「あの武器構成で防御に回るとか、ただの臆病じゃん。っていうか防御力ならキミがピカ一なんだから、キミが盾になるべきだったのに」
「そそそそそそそんなことできるか!? ミーは十条家の人間。その辺の凡民とはわけが違う!」
おー。言うに事欠いて凡民と来たか。
察するに、
……なおのこと守りに入ってどーするのさ、って感じだ。ちぐはぐにもほどがあるよ。
「とにかくユーにはこの損失を補填する義務がある! 欠けたパーティーの穴を埋めるためにミーの手足となれ! パーティーに入ってミーに貢献するんだ! 無事帰れたら
「んー。軍人くん出てこないなぁ。もしかして毒霧でやられた? それはそれで間抜けだよね」
「ミーの話を聞けぇ!」
ぎゃあぎゃあ騒いでいる十条のたわごとを無視して、戦場に意識を向ける。中々透明化を解除しない軍人くんの行動を意識しながら、水場を走り回った。福子ちゃんに迫ると思われる魚ゾンビを迎撃し、状況をコントロールしていく。
福子ちゃんも
「……そう、か。ならばミーも攻撃に参加させてもらおう!」
そしてこの状況を見た十条も現状を悟ったようだ。チェンソーザメが
「キミの助力なんかいらないから」
「ふははははは。ミーの邪魔をしようとは不届き千万。だが寛容なミーはそれを許そう。何故なら! クランを作ると言う大望が今叶うのだからな!」
「ひ、人の話を聞かない御仁ですわね……」
「ホワイ!? なぜダメージを受けたのに水に潜らない!?」
「ダメージ量が小さすぎたんだよ。仕切り直さなくても大丈夫って思ったんだろうね」
「あの
「そりゃ『鬼角笛』で強化された上に七体同時攻撃だからね。浮遊砲台が強くても三体だけの攻撃だとダメージも劣るさ!」
「チートだ! 眷属の『攻撃』は三体までなのに! なんで七体も攻撃できるんだ!」
『待機』からの攻撃を知らなきゃ、そう思うのは当然だろう。でもまあ、
「
そして十条に向かうチェンソーザメに福子ちゃんの操る眷属が迫る。七体同時の攻撃を受けて耐えきれず、チェンソーザメは近くの穴に飛び込む。
福子ちゃんのやり方を見た十条は、その手管に舌を巻いていた。ただ命令を下すだけの自分と、適切なタイミングを計って攻撃する福子ちゃん。そこにある技術の差を感じ、同時に認められずにいた。
「ありえない! そんなやり方とか――」
「上位ランククランのテイマーならみんな知ってると思うよ。キミは【ナンバーズ】の知り合いらしいけど、こんなことも知らないのかな?」
「ぐ……! ミ、ミーはそんな下賤な技などなくとも勝てるからいいんだ!」
「装備による力押し。それで今までのし上がってきただけじゃん。現に福子ちゃんにダメージ量で負けてるし」
「ぐぎぎぎぎぎ……!」
悔しがる十条。それを見て、溜飲が下る僕。横殴りとMPKの指示(疑い)の分はこれで晴れたし、これぐらいにしておくか。僕も『他人の褌でえらそうにしている』わけだし。
「十条さん……。アンタ、俺を騙したのか? 【ナンバーズ】に紹介してくれるって言ってたのに」
「いや待ってくれ! 今はそれを言い合っている状況じゃないだろうが。そう、協力してあのサメを退治して『金晶石』を手に入れてミーのクランを」
「そのクランだって、【ナンバーズ】をサポートするための分派クランだって聞いてたぜ。俺はあの【ナンバーズ】に貢献できるって信じてたのに」
有名なクランへの伝手がある。しょーもない詐欺だね。ま、そっちはそっちで好きに揉めててちょうだいな。その方が邪魔されなくて済むしね!
「今のうちに決めるよ。福子ちゃん!」
「はい、ヨーコ先輩!」
言ってチェンソーザメと魚ゾンビに集中する
……あれ、なんか忘れてる?
「きゃん!」
突然の銃撃にうずくまる
「もう、撃つなら撃つって先に言ってよね!」
「ヨーコ先輩、右!」
「――え?」
福子ちゃんの声。右側から迫るチェンソーザメの口。無数の鋭いサメの歯。それが迫ってきているのが分かる。飛びのいて態勢を崩した
(あ。これ、やばいかも)
しょーもないフラグ踏んで遊んでたバツかなー、と全く他人事のように思う僕。思考も体も完全にフリーズしており、チェンソーザメを迎撃しようとバス停を握るけど、絶対に間に合わなくて――
たぁん!
銃声が響く。
『
それがとどめになったのかチェンソーザメの意識は失われ――そのまま
「ぐええええええ……」
噛まれることはなかったけど、重い! そして押しつぶされて水中に
駆け寄ってくる福子ちゃんの気配を感じながら、僕は意識を失った。
……え!? ちょっといろいろ決まらないんだけど! そんなのアリなのぉ!?
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