第612話 第二層制圧

 第二層の制圧は、あっさりと片づいた。まあ、その後の始末に手間取りそうだけど……


 

 第二層は、第一層からの傾斜路スロープの出入り口を起点に、三つの通路が放射状に延び、その先で左右の通路がゆるくカーブしていき、第三層へ繋がる傾斜路入り口前に収束していく構造。


 それぞれの通路の両脇には、小部屋がいくつもある。


 捕虜から得た情報によると、いくつかの小部屋に帝国軍兵士が伏兵として潜んでいるらしい。


 僕たちが第二層の通路を進んでいくと、両脇の小部屋に潜んでいた兵士が、ロケット砲や対物アンチマテリアルライフルで攻撃する手はずになっていた。


 しかし、こっちには地下施設を熟知しているジジイがいる。


 帝国軍は、人の通れる通路は知っていたが、人が通る事ができない点検用トンネル(タウリ族はロボットを通していたらしい)の事は知らなかったようだ。


 知っていても、まさかこんな狭いトンネルを通れる人間がいて、天井から催涙弾を投げ込まれるなどとは思ってもいなかっただろうね。


 いや、正直僕もいまだに信じられない。


 いくらジジイが小柄とはいえ、人間がこんな狭いトンネルに入っていけるなんて……


 もちろん、ジジイ一人ですべての部屋に催涙弾を投げ込む事は無理なので蛇型ドローンも使ったが、やっぱこのジジイ、妖怪じゃないのだろうか?


 とにかく、僕らが第二層の扉を開くと、催涙剤を浴びて苦しんでいる帝国軍兵士が通路にあふれかえっていた。


「僕は右から行く。芽依ちゃんは左から、橋本君は中央を突破してくれ」

「「了解!」」


 もちろん『突破』とは、ただ通り過ぎるだけではない。


 駆け抜けながら、帝国軍兵士を殺戮していくという事だ。


 せっかく『催涙剤』という非致死兵器を使ったのに残念だが、百人以上いる帝国兵を無力化しても、そんな大人数を捕虜にするのは無理。


 そのぐらいなら、最初から致死性ガスを使えばよいのだが、あいにくとプリンターには非人道的な化学兵器のデータは入っていない。


 だから、催涙剤で無力化してから殺すしかなかった。


 まあ、可能なら何人かは捕らえて捕虜にするのだが……しばらくは悪夢に悩まされそうだな。

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