第566話 第二次攻撃の要あり

 ベイス島空爆から三十分後。


 第二次攻撃のようありと判断して、さらに十機のゼロと偵察ドローン紫雲しうん三機を送り込んだ。


 紫雲はヘリコプタータイプのドローンなので垂直離着陸が可能だが、その分航続距離が短い。


 だから、これも菊花と一緒に飛行船ドローンから吊り下げてあった。


 すでにベイス島の防空能力は壊滅していたようだが、菊花が上空を飛び回っている時に、巨大な格納庫のような建物がある事を確認している。


 上陸は、格納庫の中身を確認してからでも遅くはないだろう。


 格納庫に何も問題がないなら、残った弾薬庫にでも爆撃しておけばいい。


「ご主人様。紫雲一号機、二号機、三号機。格納庫上空に到着しました。これより、降下します」

「攻撃してくる様子は?」

「ありません」


 映像を見ると、格納庫の扉が少しだけ開いている。


 その周囲に、帝国軍兵士の姿がちらほら。


 兵士たちは小銃を持っているが、まだ有効射程距離外だからなのか撃ってくる様子はない。 


 このまま降下したら撃ってくるだろうな。


「Pちゃん。地上の兵士たちの間に、対地ミサイルを撃ってくれ。ただし、兵士には直撃しないように」

「直撃させては、ダメですか?」

「撃っても逃げないようなら、仕方がないから、当てていい」


 とは言うものの……逃げてくれよ。


 ゼロから発射された五発の対地ミサイルが、格納庫付近の地面に命中。


 兵士たちは、蜘蛛くもの子を散らすように逃げ出した。


 これでよし。


「紫雲一号機、二号機降下開始。三号機は上空に待機し、一号機、二号機の電波を中継」

「了解しました。ご主人様」


 一号機、二号機から送られてくる映像に、格納庫の扉が現れた。


 格納庫自体の大きさは、高さ十五メートル。横幅二十五メートル奥行き三十メートル。


 観音かんのん開きの扉は高さ十メートル。


 よっぽど大きな奴が中にいるのか?


 それとも、食料を備蓄しているだけなのか?


 わずかに開いた扉の向こうをのぞいても様子が分からない。


 しかし、紫雲なら、あのぐらいの隙間抜けられるな。


「一号機、格納庫内部へ。二号機は格納庫前に待機して一号機の電波を中継」

「了解しました。ご主人様」


 一号機が格納庫内部に入っていく。


 中にあったのは……


 球体?


 直径が八メートルほどの黒光りする球体だった。


 こいつはいったい何だろう?


 のっぺりとした球体には、突起のような物は見あたらない。


 巨大な爆弾だろうか?


 いや、どう見てもこの球体をおおっているのは装甲。


 という事は、機動兵器のたぐいだろうか!?


 だが、これが機動兵器だとしたら、どうやって移動するのだろう?


 車輪やキャタピラのような移動手段もない。


 こいつ自体が転がっていくなら分かるが……


 いや、どうやらそれが正解らしい。


 黒い球体はゆっくりと転がり始めた。


 それに合わせて、格納庫の扉も開き始めている。


 僕はアーニャの方を振り向く。


「アーニャさん。あれは機動兵器だと思いますか?」


 アーニャはうなずく。


「思うも何も、機動兵器以外の何ものでもないわね。私のオリジナル体が地球にいた頃、各国が球体機動兵器を作っていたわよ。地球上で戦闘に使われる事は無かったけど」


 そのとき、ふいに球体の動きが止まる。


 球体の黒光りする装甲に丸い穴が開き、何か突起物のような物がせり出してきた。


 突起の先端が光る。


 その直後、メインモニターの映像が途絶えた。


「ご主人様。一号機ロストしました」


 今の光は、レーザー兵器! 

 

 間違えない。あの球体は機動兵器だ。


「Pちゃん。二号機を上空へ待避。ゼロ部隊には、攻撃命令を。標的は格納庫、及びその内部の球体機動兵器」

「了解しました」

「それと、球体機動兵器の映像データを《イサナ》に送ってくれ」


 僕がそう言い終わった時、メインモニターの映像が回復。


 三号機の映像に切り替わったのだ。


 ゼロ部隊がミサイルを一斉に放つ様子が映っている。


 こいつで破壊できるか?

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