第563話 ゼロ部隊発進!

 ベイス島から十分に離れた海域で、《海龍》《水龍》は並んで浮上した。


 僕と芽依ちゃんが《海龍》に移乗して九九式を脱着し終えてから甲板に出ると、装甲が左右に開いて主砲がゆっくりとせり上がってきている。


 これから艦砲射撃をやろうと言うのではない。


 ここから主砲を撃って、ベイス島に届かないわけではないが、撃てばこっちの位置もばれる。


 今まで相手していた帝国軍と違い、地球の兵器を持っている帝国軍相手に位置がばれるのはけた方がいい。


 フーファイターはあれから出てこなくなったが、ジェットドローンでも潜水艦にとっては驚異だ。


 では、主砲を出してどうするのかというと、この砲身の上にはドローン用の射出機カタパルトがついている。


 垂直離着陸できないタイプのドローンを運用するのに使うものだ。


 今回使うドローンはプロペラ機で、名称はゼロ。


 ゼロは、一度カタパルトから発進したら、滑走路の無いところには降りられない。


 その分、航続距離は長いが、今回は帰還を想定していない神風ミッションだ。


 カタパルトの横にいたPちゃんが、僕と芽依ちゃんに気が付いて振り返った。


「ご主人様。芽依様。ゼロの発進準備、整いました」

「お疲れさん」


 総勢十機のゼロが、蒼空そうくうへ消えて行くのを見送ってから、僕たちは発令所に戻っていった。


「潜行開始」


 フローティングアンテナを海面に残して、《海龍》《水龍》は深く潜行していく。


 発令所のモニターには、展開中の各ドローンが光点で表示されていた。


 先ほど発進した十機のゼロを示す光点の進行方向に、五つの光点が待機している。


 これは菊花を釣り下げた飛行船ドローン。


 ゼロ部隊が合流したら、菊花を発進させる予定。


 今のところ、ベイス島から迎撃機が上がってくる様子はないが、上がってきたら菊花が応戦して、その隙にゼロが地上を攻撃する作戦だ。


 作戦開始まで時間があるので、それまで各自休憩を取るように言ってから、僕は発令所を出た。


「カイトさん」


 ミールに呼び止められたのは、僕の部屋の扉を開いた時。


「どうした? ミール」

「ちょっと、お話したい事が」


 とりあえず、ミールを部屋の中に入れた。Pちゃんに見つかったら、また五月蠅うるさいだろうな。



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