第505話 飲み比べ対決2

「まだまだ行けるさ。爺さんの方こそ、そろそろヤバいんじゃないの」


 と、強がりを言ってみたが、後一杯飲めるかどうか。


「ヤバい? 何を言っている。わしはまだまだ飲めるぞ」

「ええい! 爺さんの肝臓は化け物か!」

「ご主人様。人のことを言えますか」

「そんな事ないぞ。さすがにこれだけ飲むと……」


 ヤバい! かなり酔いが回ってきた。


「カカカカカカ! この勝負、わしの勝じゃな」


 くそお! 


「いいえ。ご主人様の勝ちです」


 なに? どういう事だ? Pちゃん。


「何を言うかロボ娘。現におまえの主人は、フラフラではないか」

「確かにフラフラですが、ルスラン・クラスノフ博士は、ご主人様の三分の一しか飲んでおりません」


 なに?


「な……何を言うか」


 ジジイは慌てて、ダンブラーを持っている右手の袖口を左掌で隠した。


 さては、そこに何か仕掛けがあるな。


「隠しても無駄です。私はすでに見ました」


 そう言ってPちゃんは、壁にプロジェクションマッピングを映し出した。

 

 そこに映っていたのは、ジジイの袖から延びているゴム管がダンブラーに繋がっている様子。


 もしかして……


 僕の持っているダンブラーに付いている鋲を摘んでみた。


 あ! 回したら、外れた。なるほど、こういう仕掛けだったのか。


 途中から飲むふりをして、この穴からゴム管を通して酒を外へ捨てていたな。


「父さん。これはなんだい?」


 アーリャさんはジジイの背後から、赤ワインでいっぱいのピッチャーを取り出した。


 ゴム管を通じて、あれに流し込んでいたのか。


「そ……それは、明日飲むために取っておいた分じゃ」

「こっちは?」


 ライサが、もう一つピッチャーを取り出す。


「それは、明後日飲む分じゃ」

「じゃあ、これは?」


 ナージャが、さらに一つのピッチャーを取り出す。


「それは明明後日の……」

 

 さらにジジイの背後から、五つのワインピッチャーが見つかった。


「ふざけんな!」「今すぐ飲め!」

「こりゃ! 娘たち! か弱い老人に何を……ゴボゴボ」


 ジジイはアーリャさんとナージャに押さえつけられ、村娘たちにピッチャーのワインを無理矢理口に流し込まれた。


 さしものジジイもたちまち酔い潰れる。


 おいおい……死んでいないだろうな?


 ジジイは高いびきをかいていた。


 とりあえず生きているようだ。


「ミール。後を頼む」

「はーい」


 ミールは酔いつぶれたジジイの上に木札を置いた。


 呪文を唱えると、程なくしてジジイから分身体が起きあがる。


 必要な事は、こいつから聞けばいいな。

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