第477話 偵察隊発進 1

「練った結果がこれですか」


 Pちゃんが不満顔でそう漏らしたのは、会議が終わった夕方頃。《海龍》甲板上で竜笛を吹いているミールの背後でのことだ。


「Pちゃん。この偵察プランに、何か問題があるとでも?」

「いいえ。ベジドラゴンに乗って、ベイス島に偵察に行くというのはいいと思います。それにご主人様が直接行くというのも、まあいいでしょう。ご主人様不在の間は、前回同様アーニャ・マレンコフさんが艦隊の指揮を取るのもいいです。ただ……」


 ただ?


「ミールさんも、同行するというのが問題です。未婚の男女を二人切りにするというのは……」

「い……いや、今回はナージャも同行するから、二人切りじゃないし……」

「ご主人様。まさか、ナージャさんに手を出したりはしませんよね?」

「あのなあ……僕がそんな事をするとでも思うか?」

「ご主人様は自分から女性を口説こうとしないで、女性を勘違いさせて惚れさせるのが得意ですから」

「そんな事はしていない」


 人聞きの悪い。僕が人の心をもて遊んでいるみたいに……


「自覚されていないのですね」

「なにが?」

「いえ、自覚がないならいいです。しかし、芽依様の話では、ナージャさんは戦闘中に、ご主人様を誘惑しようとしたそうですけど……」

「だから、あれは……ナージャが僕を矢部と間違えて、色仕掛けでたぶらかそうしたのであって……」


 竜笛を吹いていたミールが不意に吹くのを止めて、僕の方を振り向いたのはその時……


 今のPちゃんとの会話、聞こえていたか?


「カイトさん。エシャー達が来ましたよ」


 ミールが指さす上空では、赤いリボンを付けたベジドラゴンを先頭に、ベジドラゴンの子供たち数頭が逆V字編隊でこっちに向かってきていた。

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