第464話 麻雀2(回想)
「ここだけの話だがな」
矢納は別に怪しむ様子はなかった。
「麻雀仲間なんだよ」
「は? 麻雀? それって、秘密にしなきゃならない様な事ですか?」
「一応、リトル東京内でギャンブルは禁止だからな。大っぴらには言えないだろう」
「そうですね」
防衛隊内部でも賭け事をする人は少なくないが、禁止されている事には変わりない。
しかし、賭事は禁止されていても、大目に見られていた。
だから、何か大きな隠し事をする時は隠れ蓑として使える。
もしカルル・エステスが本当にスパイをやっていて、この男から何か情報をやりとりするために会っていたとしたら……
誰かに疑われたときに『実は賭麻雀をやっていた』と言えば、それ以上疑われる事はない。
本当に賭麻雀なのか探りを入れる価値はある。と、彼女は考えていた。
「賭麻雀ですか。面白そうですね。私も参加させてもらっていいですか?」
彼女の突然の提案に矢納は慌てた。
「いやいや! ダメだ。これは、秘密厳守で……」
この慌てようは、やはり怪しい。
「秘密厳守も何も、すでに私に知られてしまいましたよ」
「誰かに話す気か?」
「そんなつもりはありませんが、秘密を守りたかったら、秘密を知ってしまった者も仲間に入れた方がいいのじゃありませんか」
「仕方ねえな」
「で、麻雀はどこでやるのですか?」
矢納はガラス張りの喫煙所から見える一つの建物を指さした。
「あの倉庫が見えるか? あそこの二階でやる事になっている」
「そうですか。いつやるのです?」
「今から三十分後だ」
あまり時間がない。しかし、自分と矢納との会話は小淵と矢部が聞いているはず。
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