第448話 暗闇から泣声

「ご主人様」


 司令塔からPちゃんが顔を出した。


「スキャンしたデータの解析が終わりました。カートリッジには何も問題ありません」

「そうか。ありがとう」


 カートリッジを艦内に運び込むと、ミールとPちゃんを伴って医務室へミクの様子を見に行った。


「ああ! カイト殿。ミクなら今、眠ったところだ」


 ミクのベッドの横には、キラとミーチャがいた。


「キラ。君も戦闘で疲れているだろう。看病ならミーチャに……」

「いやいや、ミーチャ一人では大変だな、と思ってな」


 ミーチャが不満そうな顔をする。


「看病ぐらい、僕一人で大丈夫ですよ。僕は戦闘に出ていないのだから、このくらい……」

「いやいや、そうは行かないだろう。ミーチャはこんな可愛い顔をしているが男の子だ。女の子の世話をするには、いろいろと不都合があるだろう」

「不都合?」

「ミクが身体を拭いて欲しいと言ったら、ミーチャはできるか?」


 とたんにミーチャは顔が真っ赤になった。


「そ……そ……それは無理です!」

「そうだろう。だから、私も一緒にいるのだ」


 とりあえず、ミクは大丈夫そうだな。


 医務室を出ると、ミールが悩ましそうな顔して頭を押さえた。


「ミール。頭が痛いのか?」

「いえ……ちょっとキラの事で……」


 え?


「カイトさん。キラがどうしてミクちゃんの看病しているのか分かりますか?」

「ええっと……二人とも、いつの間にか仲良くなったのかな?」

「ミールさん。無理です。ご主人様は、こういう事にうといですから」


 え? え? Pちゃんまで何を?


「ご主人様。キラさんは、ミーチャさんをミクさんに取られないかと警戒しているのですよ」


 あ! そういう事か。


「しかし、ミーチャはミクが苦手みたいだったぞ」

「カイトさんは、そう思っていても、キラはそう思っていないのですよ。あたしとしても、いつまでキラの恋に気が付かないフリをしてあげられるか」


 フリ?


「修行中は恋愛御法度と言った手前もあるので、恋愛に気が付いてしまっては、あたしの面子が……」


 なるほど。ミールはキラの恋愛を見て見ぬフリをしてやっていたのか。


「ミール。キラは分身体の制御ができるようになったけど、まだ修行の必要があるの?」

「そうですね。まだ二ヶ月は修行の必要があります。それまでは気が付かないフリをしていてあげましょう」


 そんな事を話しながら歩いているうちに、僕たちは貨物室の前に着く。この中に置いてあるロボットスーツ着脱装置の様子を見に来たのだが……


 扉を開くと、中は真っ暗……ん?


「しくしくしく」


 な……暗闇から泣声!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る