第441話 かつての仲間7

『大丈夫です。こんな見え見えの罠はやりませんよ』


 古淵機から送られて来た映像をバイザーの右半分に表示した。左半分は常に古淵の様子を表示している。


 一応、ウイルスチェックもしたが問題は無かった。


 表示された映像は《アクラ》の甲板上。


 帝国兵と分身達ミールズが戦っていた。


 だが、それはいつものように、一方的ではない。


 帝国兵は銃や険ではなく、火炎放射器を武器に使っていたのだ。


『先ほど予想していなかったと言いましたが、僕が予想していなかったのは、もう一隻の潜水艦による待ち伏せです。北村さんの思惑が《アクラ》の拿捕という事は予想していました。その場合、移乗白兵戦に投入するのはナーモ族の分身魔法使いだという事は予想していました』

「確かに《マカロフ》と戦った時はそうしたからな。それで火炎放射器を用意したのか?」

『ええ。カ・モ・ミールさんといいましたね。彼女が分身の憑代に木札を使っているという事は、カルル・エステスからの情報で分かっています。ならば、火炎放射器が有効と思って用意しました』


 ミールの憑代も耐熱素材に変えた方が良さそうだな。 


 火炎放射器を持っている帝国兵は三人。


 三人は船内入り口前に陣取り火炎放射器を構え、分身達ミールズと対峙していた。


 今のところ、降着状態になっているが……


 突然、分身達ミールズの上を何かが飛び越えた。


 キラの分身体!


 帝国兵が火炎放射を浴びせるが、キラの分身体は憑代にチタニウム合金の短剣を使っている。火炎放射器の炎など効果はない。


 一度は炎に中に包まれたキラの分身体は、口裂け女状態になって帝国兵の一人に飛びかかり、首に噛みついた。


 血飛沫をまき散らしながら、帝国兵は倒れる。


『あの女の子は、キラ・ガルキナと言いましたね。かつてはエラ・アレンスキーの部下だったという。彼女の憑代は短剣だと聞いています。おそらく、あなたの事だから、チタニウムかタングステンで複製を作ったのでしょう。だから、火炎放射器は効果がない。しかし……』


 残り二人の帝国兵が、仲間の死体ごとキラに火炎を浴びせるがまったく効果がない。


 キラが反撃に出ようとしたその時、不意に船内出入り口の扉が開く。


 出てきたのは……エラ!

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