第435話 かつての仲間1
視線を転じた。
その先で空中に浮かんでいるのは、クリームイエローの九十九式と銀色の九十九式。
クリームイエローは矢部だな。以前に戦ったので分かる。と言うことは、銀色が古淵か。
「先にこいつらと戦うことになりそうだな」
と、僕がつぶやいたその時、通信が入った。
通信相手は矢部。
『隊長。ここはお互い引きませんか? どちらも消耗が激しいでしょう』
確かにこちらも消耗しているが……
「それはできない」
矢部がわざわざそう言ってきたという事は、何か不利な事があるのだろう。
例えそうでないとしても、今ここで矢部と古淵を《アクラ》の方へ行かせるわけにはいかない。ここに足止めしておかないと作戦に支障がでる。
『やれやれ。隊長はそう言うと思いました。ただ、聞いて下さい。俺がそんな提案をしたのは、隊長と芽衣ちゃんを殺さずに生け捕りにしたいからです。今の状況でやると、どちらかが死ぬまで戦うことになる。それでもやりますか?』
「やる」
『また即答ですか。そんなに俺たちを殺したいのですか? あなたは記憶にないかもしれないけど、俺たちは先代の北村さんの部下だったのですよ』
「戦いを先延ばしにしたところで、いずれはやることになる。ならば、今戦っても同じだ」
『では、交渉決裂ですね。隊長一つだけ言っておきます。今回は手加減しませんよ』
やはり、前回は手を抜いていたのか。
「北村さん」
不意に芽衣ちゃんが話しかけてきた。
「お願いがあります」
「どうしたんだい?」
「矢部さんの相手は私がやります。古淵さんの相手は北村さんにお願いしたいのです」
「君の手で矢部を殺したいのか?」
芽衣ちゃんは首を横にふった。
「古淵さんとは、戦いたくないのです」
そうか。レムの支配下にあるとは言え、芽衣ちゃんにとって古淵はかつての仲間。戦いにくいのだろう。
では、矢部は……聞くまでもないな。あいつは、味方でなかったら、殺したいぐらいだったのだろう。
「分かった。古淵の相手は僕がやる。芽衣ちゃんは矢部をやってくれ」
「ありがとうございます」
再び視線を敵に向けると、二つのロボットスーツがこっちに向かってくるのが見えた。
「芽衣ちゃん。行くよ」
「はい」
僕たちも敵に向かって加速した。
芽衣ちゃんはクリームイエローの機体に向かって。
僕は銀色の機体へ向かう。
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