第419話 損害状況2

 後ろを振り向き、ミールたちの様子を見た。


「ミールとキラは無事か?」

「大丈夫です。あたしもキラも船酔いには強いですから」


 良かった。ん? 肩を叩かれたので振り向くと、アーニャがひきつった笑みを浮かべていた。


「私とマー 美鈴メイリンの心配はしてくれないのかしら?」

「も……もちろん、アーニャさんも馬艦長も心配ですよ」


 全員に声をかけないと後々まずい事になりそうだな。


「北村さん」


 声の方を振り向くと、タブレットを持った芽衣ちゃんが立っていた。


「も……もちろん、心配していたよ。芽衣ちゃん」

「は? 何が心配なのですか?」

「いや……さっきの衝撃で、怪我とかしていないかなと……」

「もちろん大丈夫ですけど……私なんかの事を心配してくれていたのですか?」

「そりゃあ……心配するさ……」

「うれしい」


 あれ? 逆に、ややこしい事に……


 僕に歩み寄ろうとする芽衣ちゃんの前に、ミールが立ち塞がった。


「メイさん。何か用事があったのでは?」

「そうでした」


 芽衣ちゃんは手に持っていたタブレットを僕に見せた。


「下流に送った水中ドローンが《アクラ》のモーター音を捕らえました」

「《アクラ》は、どっちへ向かっている?」

「まだ、こっちへ向かっています」

「こっちへ? やはりだませなかったか? それとも、僕らの生死確認に来るのか?」

「いえ。ドローンの回収ではないかと……」

「回収? フーファイターは自力で帰還できないのか?」


 芽衣ちゃんはコクっと頷いた。


「フーファイターが先ほど使用した対消滅爆雷は、フーファイターの燃料タンクにある反物質をカプセルに入れて投下する兵器です。最初の攻撃の後、さらに二発投下していました」


 確実に僕らを仕留めるためか……


「なので想定量の三倍の反物質を消費しています。他にもレーザー砲などで消費した量、ここまで来るのに使った量などを計算しましたが、フーファイターのスペックがカタログ通りなら、どう見積もっても帰還に必要なエネルギーが足りません」

「となると、近くに不時着して回収を待つしかないのか」

「非バリオン物資などの貴重な素材を使っていることから、機体をこのまま遺棄するとも考えられません」

「よしチャンスだ! フーファイターが不時着しそうなところを割り出そう」

「フーファイターを回収しに来たところで《アクラ》を拿捕するのですね?」

「そうだ」


 僕はPちゃんの方を振り向いた。


「Pちゃん。この周辺の衛星写真を出してくれ」

「はい。ご主人様」


 Pちゃんは壁に向かって、レーザーを照射した。


「三時間前に《イサナ》から送られてきた映像です」


 壁に映ったのは大河マオ川。その流れの中に、小さな島々が点在している。


 この中でフーファイターが降りそうな場所は?

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