第342話 解放

「☆▽+$#%&**〇」


 バスルームから、エラが出てきて、帝国語で何かを言った。


 翻訳機はナーモ語 ⇔ 日本語にセットしたままなので、エラが何を言っているのか僕にはさっぱり分からない。


 カミラが僕達の方を向く。


「薬ができたわ。もう私達は出ていくわね。これは、約束の迷惑料よ」


 そう言って、カミラは金貨五枚をベッドの上に置いた。


「はーい。お姉さま」


 ミールが目を輝かせる。


「それと、申し訳ないけど、あなた達には少しの間だけ寝ていてもらうわね」


 え? 何を……と聞く前に、エラが僕達の方へやってくる。


「きゃあ!」


 ミールが電撃を受けて、ベッドの上に倒れた。


「ミール!」


 次の瞬間、僕も電撃を食らう。


 意識が暗転……


 …


 ……


 ………


「ご主人様。ご主人様」


 ん? 耳元でPちゃんの声? 


「ご主人様。目を覚まして下さい。早く、目を覚まして下さい。このままでは、危険です」


 危険? やはり、エラ達は僕らを始末する気か? あれ? 手は動く。


 戒めは解かれているみたいだが……


 うわ! 何かが、僕にのしかかって来た!


 目を開くと……え?


 ミールの顔が眼前に迫っていた。


「うぐ」


 ミールの柔らかい唇が僕の口に……


「カイトさん。起きましたか?」


 危険って……そういう事か……


「やはり、悪い魔法使いにかけられた眠りの魔法を解くには、キスに限りますね」


 いや、眠りの魔法じゃないんだけど……ていうか、ミール。いい加減に僕の上から退いてほしいのだけど……いや、まあ……これはこれで気持ちいいのではあるが……


「ミールさんがキスする寸前に、ご主人様は目を開いていましたよ」

「あら? そうでしての。もう! カイトさんたら、あたしにキスしてほしくて、気絶したフリをしていたのですね」


 いや、フリじゃなくて、マジに気絶していたから……


「そんな事をしなくても、キスなんていくらでもしてあげますわ」


 いや……まあ……それは、うれしいけど……今はそれどころでは……


「ご主人様。ミールさん。《海龍》のアーニャ・マレンコフさんが通信を求めています」


 え? やべ! 時計を見ると定時連絡の時間をとっくに過ぎていた。


「なお、向こうに残してある私の本体が、プロジェクション・マッピングでこの部屋の光景を投影しますので、二人とも体裁を整えて下さい」

「仕方ないですね」


 ようやく、ミールは僕の上から退いた。

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