第249話 救助
運河に出ると、水量は堤防ギリギリの高さまで増えている。
その水流を人や馬が流されていた。
「出でよ! 式神」
オボロを召還したミクが、水面から次々と人や馬を拾い上げて行った。
少し、遅れて僕と芽衣ちゃんがロボットスーツで水面スレスレを飛行し、人や馬を拾い上げ、岸辺で待ち構えていたミールとPちゃんのところへ連れて行った。
ミールは十二の分身を総動員して、犠牲者に人工呼吸や心臓マッサージを施していく。その一方で、PちゃんがAED使って蘇生処置を行っていた。
意識を取り戻した人達から、キラとミーチャが事情を聞き出していた。
「ご主人様」
一人の犠牲者を引き渡した時、不意にPちゃんが話しかけてきた。
「香子様を、冷たい女だなんて思わないで下さい」
「分かっているよ。本当のあいつは、溺れている人を見捨てるような冷酷な人間じゃないことぐらい」
昔、一緒にアニメを見たとき、キャラが死んだのを見て号泣した。それが、本当の香子だと思う。この惑星で戦争に関わっているうちに、だんだんおかしくしまったんだ。
「それに香子が本当は優しいという事は、Pちゃんが証明している」
「私が?」
「君のAIは、香子の記憶をベースにしている。反対もしないで僕についてきたのは、義務だけじゃないだろ。本当は溺れている人を助けたいという香子の本音が、君を動かしたんじゃないのか?」
「そうかもしれません」
「北村さん」
背後から芽衣ちゃんに声をかけられ振り向いた。
「さっき、香子さんが北村さんを引き留めようとしたのは、トラウマがあるからです」
「トラウマ?」
「前の北村さんは、溺れている帝国兵を救助しようとして、撃たれた事があるのです」
「そんな事が……」
「あの時、北村さんは重症を負って、香子さんは病院の待合室でずっと泣いていました」
「そうだったのか」
「だから、もっとご自分を大切にして下さいね」
そう言って、芽衣ちゃんは飛び立っていった。
僕も、その後から飛び立つ。
しばらく飛んで、目の前を流れてきた若い兵士を拾い上げた。
これは!?
見覚えのある顔だった。
今朝の戦闘で見逃した砲兵隊の女の子。すでに息絶えていた。
水面に目を向けると、さらに二人、女性兵士の死体が流れてきていた。
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