第191話 魔力切れ?

「くそ! いったいどれが本物なんだ!」


 エラは必死になって、立体映像に向かってプラズマボールを撃ちまくっていた。


 僕の方も必死だ。プラズマがぶつかる前に映像を消さなきゃならない。


 ぶつかったら映像だとばれる。


 その操作を、僕は手元のウェアラブルコンピューターを使い手動でやっていたのだ。


 そうしている内に、エラが撃ち出すプラズマボールの数が目に見えて減って来た。 

 

 僕は通信機のスイッチを入れる。


「ミール。エラの様子が見えるかい?」

『はい。よく見えます』

「奴の魔力残量は、分かるかい?」

『それは無理です。あたしが魔光を見られるのは、魔法回復薬を飲んでから一時間ほどですから』

「そうか。無理を言って済まない」

『でも、あの様子だと間もなく魔力切れです』


 ミールがそう言った後あたりから、エラはプラズマボールを出さなくなった。


 魔力切れ?


「クソ! 薬……薬を……」


 エラは、懐に手を入れて何かを探す。


 そこに薬があるのか?


「ミール。今だ」

『はい』


 隠れ場所から、ミーチャが飛び出してきた。


「大尉殿」

「ん?」


 エラは声の方を向く。


「ミーチャではないか。貴様こんなところで何をしていた?」

「申し訳ありません。廃墟の中で道に迷ってしまいました。そしたら、大きな音が聞こえたので、ここまで来ました次第であります」

「そうか。まあ、とにかくいいところへ来た。薬を出せ」

「はい」


 ミーチャは、薬袋をエラに差し出す。


 さあ飲め。


 それは回復薬に似せて、プリンターで作った眠り薬。


 エラはミーチャの差し出す薬袋に手を伸ばす。


 さあ、受け取れ。そして飲んで眠ってしまえ。


 エラの手が薬袋まで十センチのところまで来たとき、突然エラの掌が光を帯びた。


「バカメ!」


 エラの掌に、小さなプラズマボールが発生して、薬袋を焼き切った。


 まだそんな魔力が残っていたのか


 分身のミーチャは、咄嗟に離れて無事だっだようだが……


「大尉殿! 何をなさるのです?」

「黙れ! 貴様、ミーチャではないな」

 

 見破られた?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る