第30話 Pちゃんのアンテナ?

 兜を被っていた時は顔がよく見えなかったが、こうしてよく見ると帝国軍兵士ってやはり地球人だな。人種は欧米人ばかりのようだが……


 だとすると、コピー人間?


 じゃあなんで、こんな骨董品みたいな武器ばかり持っていたんだろう?


 倒れている兵士の一人の傍に落ちているスマホのような物を拾ってみた。


 やはりスマホだ。


 こんな物を持っているのに、なぜ武器がこんな骨董品ばかりなんだ?


 武器なんて、いくらでもプリンターで……!?


 そういえばPちゃんは、マテリアルカートリッジは貴重品だと言っていた。


 軍隊に支給する武器なんか作っていたら、たちまちなくなってしまう。 


 だから、武器は現地で作ったってことかな?


「あの、それも、もらっていいですか?」


 ミールの分身が手を出していた。


「ああ、いいよ」


 彼女にスマホを渡した。


 この惑星の人に、スマホを上げても猫に小判だけどね。





「参考までに、聞いておきたいんだが」


 僕はトレーラーの屋根に上って本物のミールに話しかけた。


「いったい、同時にいくつ分身を出せるんだい?」

「最大で十二です」


 トレーラーの下では八人の分身達ミールズが、せっせと身ぐるみ剥がし作業をやっていた。


 あ! 下着に縫いこんであった金貨まで剥がしている。


 容赦ないなあ……


 下着一枚になった兵士は、一人ずつ木に縛りつけられていた。 


「それで、損害分の取り立てはできそうかい?」

「全然足りませんね」


 ミールは鎧や兜を丹念に調べながら言った。


「ところで、あなたのお名前を、まだ聞いていなかったのですが」

「ああ! そうだったね。僕は北村海斗。カイトと呼んでくれ」

「カイト!?」


 突然、ミールは作業を中断して振り返った。


「それじゃあ、ベジドラゴン達が噂している、塩湖に降りてきた地球人て、あなたですか?」

「え? 僕の事、噂になってたの?」

「ベジドラゴン達は、あなたを英雄だと言っています」

「え? そうなの? 照れるな」

「何でも、レッドドラゴン数千頭を瞬殺したとか」

「それは嘘だ」


 こらこら、ベジドラゴン達よ。フェイクニュースを流すんじゃない。


「嘘だったのですか? 変だと思いました。最近、レッドドラゴンて、数が減っているし、そんなに沢山いるはずはないとは思っていのですが……」

「数が、減ってたの?」


 やべ、ひょっとして、絶滅危惧種を殺しちゃったのかな?


「僕が殺したのは、一頭だけだよ」

「一頭でも、殺したのは事実ですね? じゃあ魔力の源は持っていますか?」

「魔力の源? いやそんなものは知らないけど……」

「レッドドラゴンの肝臓です。持っていませんか?」


 あ! ひょっとして。


「ベジドラゴンの子供に聞いたんだけど、レッドドラゴンの肝臓を買い取りたいと言ってるナーモ族って君の事?」

「ああ! それたぶん、あたしです。さっきも言った通り、隠し場所にお金があります。それを取ってきて支払いますので、売ってもらえませんか?」

「まいったなあ。入れ違いになっちゃったよ」

「入れ違い?」

「ああ。その話を聞いて、ベジドラゴンの子供に、僕の仲間と一緒に肝臓を持って村へ行ってもらったんだ」

「え? 村へ……行っちゃった?」


 あれ? ミールの顔が蒼白になっていく。


「何か、まずかったかな?」

「あわわわ……ど……ど……どうしましょう? 大変な事に」

「ん?」


 バサバサバサ。


 頭上から羽音が聞こえてきた。


 見上げるとロットが降りてくるところだった。


「ロット。どうしたんだ? エシャーはどうした?」


 ロットは僕の足もとに降りて、何か白い棒状の物体を吐き出した。


「ピー!」


 ロットは、かん高い鳴き声を上げて僕を見上げる。


 棒を拾い上げてみた。


 リレーのバトンぐらいの大きさだが……これは!?


 Pちゃんの頭に着いてたアンテナ!

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