第5話 4.衆寡敵せず(東日本大学新人戦)

4.東日本大学新人戦

○ 「我れ衆(おお)くして彼れ寡(すくな)くば、勤めてその勢いを張る」

  数の論理とその運用法の勝利

 明治はまず、(1年生の)数で他校を圧倒した。数の多さを武器にして、「気勢を上げる」という攻撃で、遠くにいる敵校に心理的動揺を与えたのです。

 もちろん、明治の監督・OB・コーチから緒先輩と、指導陣の厚さと熱さによって、今年の4月から日本拳法を始めたとは思えないような選手がいたことも確かでしょう。

 しかし、勢いとか雰囲気・大きな声といった、目に見えないものでも、武器にできるならするのは鉄則なのです。ここの凄いところは、数十名の部員や監督・OB諸氏が試合会場内でバラバラに散っていても、試合開始前には必ず明治の参謀本部前に全員が集結し、円陣を組んで気勢を上げる(示威行為を行う)という、明治のお家芸ともいうべき、組織力と機動力が遺憾なく発揮されていたという点でした。


 二段2名・初段1名というあの慶応を倒して勝ち上がってきた明治学院大学(明学)も、明治の元気の良さに圧倒され押しまくられたかのようだ。

 3・4年生になれば、体力・技術力・精神力とそのバランスが肝となるが、1・2年生の拳法とは、如何に元気の良さを活性化させることで乏しい体力や技術力を引っ張り上げるか。ここに大きな勝負所があるのではないか。

 彼ら「子供」を盛り上げて乗らせて焚きつけて、とにかく前へ出ることを覚えさせれば、技術や体力はそれに引っ張られてついてくる。

 明治のはじめた15人の新入生(養成へのチャレンジ)というのは、大学日本拳法界において稀にみる壮大な実験といえるのではないだろうか。これが成功すれば、明治の選手層はより重厚で強力になるだろう(15名の内、スポーツ推薦の人が1・2名という構成なのでしょうが)。


 OBが忙しい合間を縫って大学に来て、技術を教えることも大切でしょうが、1学年15名の人間がいれば、「イモ洗い」の原理で、自然と自分たちで切磋琢磨して皮がむけ「食えるイモ」になる(もちろん、煮たり焼いたりという鍛錬は必要ですが)。


 人から教えてもらって気づくこともあれば、自分自身で考え哲学して修正・改善していかねばならないこともたくさんある。そして「自らその意を清うすべき」部分とは、独りよりもむしろ大人数の中であるからこそ、自分自身で更生・切磋琢磨することができる。それはまた、独りで家で勉強するよりも、あえて学校という集団での学習形態が生まれた理由でもあるのだから。


他校でも、来年4月の新入生勧誘期間には、学生だけではなく、監督やコーチ、OBやその奥さん・娘まで総動員して、数を増やすことに専念すべきだろう。指導者さえしっかりしていれば、いくら人数が多くても烏合の衆にはならないのだから。


○ 関東大学日本拳法界のインディーズたち

 最近、世界の映画界では、ハリウッドよりもインドやフィンランドの映画が面白い。

 「アイアン・スカイ 第三帝国の逆襲」(2019年公開)なんて、ハリウッドでも絶対に言えないような真実を、おバカな話にのせて言いまくっている。(インディーゴーゴーでクラウドファンディングを実施)。よくもまあ、たったの100万ドルであんな凄い映画ができたものです。


映画『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』特別映像

https://www.youtube.com/watch?v=mw4ZWjfjZGc



 青学・立教・明学といった、明治・日大に比べて部員やOBの数もすくない学校が、小さい所帯ならではの機動力・独創性で、今年は独自の存在感を示していたようです。

 ミッション系というのは、学風が自由で伸び伸びとしているというイメージが私にはあるのですが、彼ら独自の学風(学問への取り組み方)・校風(学校としての存在イメージ)・気風(気分的・精神的なスタイル・雰囲気)が日本拳法という活動にも影響しているのでしょうか。

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