第56話

 


 


 


「はい。マオマオ様。皆、マーニャ様たちに従っております。マーニャ様たちに反論するのはマユさんだけです。」


おっと、タイチャンからチクッとした嫌味がでたよ。


確かに私はマーニャたちのやることに反論することもある。


でも、それはどうしてもマーニャたちのやることが突拍子もないことだったり計画性のないものだったりするときだけだ。


時々、酷いんだもん。マーニャたち。


こないだはクーニャが「これからは一日三食ミルクだけにする!」って言いだすし、クーニャがミルクだけしか飲まないんだったら他の魔族もミルクしか飲まないようにするなんて言い出す始末だ。


流石にミルクだけでは栄養が取れないので却下した。


もちろんクーニャだけじゃないマーニャもボーニャもそれぞれやらかしてくれている。


ボーニャはおやつしか食べないと言い出すし、マーニャも魚しか食べないと言い出したのだ。


栄養が偏って病気になってしまうといけないと思って口を出したのだが・・・。


「はははっ。流石はマユさんじゃ。マーニャ様たちは良くも悪くも純粋じゃからのぉ。手綱を握る者がいないとならぬの。それがマユさんであったのならちょうどいいではないか。マーニャ様たちはマユさんの言う事だけは聞くのであろう?」


「ええ。まあ。」


元魔王様は豪快に笑いながらそう言った。タイチャンは不満そうに眉を寄せた。


きっとタイチャンは私のことが羨ましいのだろう。私がマーニャたちに意見を言っても却下されずに採用されてしまうから。


「順調そうじゃな。よかった。猫様たちを魔王にさせるのにはちょいっとばっかし不安があったのじゃ。よかった。よかった。」


『大丈夫なのー。任せるのなのー。』


『そうなのー。マユがいるから大丈夫なのー。』


『マユに任せておけば安心なのー。』


元魔王様の言葉に部屋の隅で三匹で遊んでいたマーニャたちがやってきた。


っていうか、マーニャたち私がいるから大丈夫ってどういうことだろうか。特にボーニャ、私に任せておけば安心ってさぁ、魔族のトップに立っているのはあなたたちなのだからもうちょっとこうなんというか・・・。


まあ、マーニャ達に頼りにされているというのは嬉しいことだけどさ。


「はははっ。裏の実権はマユさんが握っているということだな。」


そう言って元魔王様は楽しそうに笑った。先ほどまで死にそうだったとは思えないくらい元気だ。


「ですが、元魔王様。一つだけ問題があります。お力を貸してはいただけませんでしょうか。」


私は、そう切り出した。


「ほぉ・・・。問題とはなんだ?言ってみよ。」


元魔王様は面白そうなものを聞いたとばかりに目を細めた。


私は臆することなく今の課題点を元魔王様に伝える。


「レコンティーニ王国は友好的なのですが、それ以外の国が魔族のトップが猫であるということに難色を示しているところがございます。正式な魔王の後任ではないのではないかと言われております。どうか、元魔王様からマーニャたちが正式な魔王の後任だとお知らせをしていただけませんでしょうか。」


そう。レコンティーニ王国は猫様は神様です!というような国だから全然問題はなかったのだが、他の国は別だ。


血気盛んな国はないので今のところ平和だが、猫が魔族の長だということに異を唱えている者も多い。


「ふむ。では、儂はしばらくの間マーニャ様たちと一緒に各国に挨拶周りすることにしようかのぉ。儂と一緒にいれば、後任というのは嘘だということもないであろう。」


「ありがとうございます。」


「よいのじゃ。儂の寿命が一年延びたのもこの為だったのかもしれぬのぉ。ほっほっほっ。それに最期に世界一周というのも良いなぁ。」


元魔王様はとても気さくな人だ。そしてフットワークも軽い。


『我も行くのだ。』


「私もご同行させてください。」


プーちゃんも女王様も世界一周の旅について行きたいと手を上げた。


「そうじゃのぉ。マーニャたちの後ろには始祖竜様がいるということも示した方が良いじゃろう。だが、パールバティーはそんなに長くは国をあけられぬじゃろう。」


しかし、元魔王様はプーちゃんがついてくることには了承したが、女王様がついてくることに対しては了承しなかった。


まあ、それは仕方がないと思う。


元魔王様が言う事には一理あるし。一国の女王様がそんなに長期間自国を留守にするわけにはいかないよね。


まあ、それだったら魔王であるマーニャたちが長期間国を留守にしてもいいのかってツッコミが来るだろうけど、これに関しては魔族の問題を片付けに行くわけだから立派な外交である。


それに、腐っても魔族だ。人間よりは強い・・・はずだ。


ちょっと、いや、かなり心配だけど。


そうして私たちは世界一周の旅に出たのだった。


 


 


 


☆☆☆


 


 


 


そうして、一年後。


『う~!!可愛いのー!』


『ぷにぷにしてるのー。』


『ふくふくなのー。』


マーニャたちは生まれたばかりの赤子の前で始終ご機嫌に尻尾をゆったりと揺らしていた。


『はっはっはっ。可愛いだろう。なんたって我の子だからな!』


ツンツンと赤子の頬をつつくプーちゃん。


「はいはい。可愛いのはわかるけど、親バカは適度にしておこうね。」


元魔王様は化粧水を飲んでから一年後に眠るように亡くなった。


もちろん世界一周してマーニャたちを各国に魔王だということは無事に知らせ終わっている。


『うむうむ。プーちゃんに似ず、マオマオに似た子でよかったのぉ。実によかったのぉ。可愛いのぉ。』


タマちゃんはそう言って、にこにこしながら赤子を見つめている。


「私の妹は世界一だわ。うふふ・・。」


女王様は、にやけた笑みを浮かべている。その顔はまるでしまりがない。


誰も彼もが元魔王様が最期にこの世に残した赤子に夢中だった。


どうやらあの化粧水がこの世に存在した理由は元魔王様が時期魔王を産むためだったようです。


これで、この子を立派な魔王に育てあげたら私はマーニャたちと晴れてスローライフを送れるはず!


私はそう希望に胸を膨らませた。


 


 


 


 


 


END


 


 


長らくご愛読いただきましてありがとうございました。


この作品はこれで終わりとなります。


ただ、番外編はそのうちどこかにアップしていくかと思います。


もし見つけましたら読んでいただければ幸いです。


 


 


 




 


 


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