第6話


そうだよ。


キャティーニャ村のダンジョンの最下層のボスってプーちゃんじゃんか。


私たちはプーちゃんの涙が染み込んだ畑で作ったトマトを食べたことがある。


きっとあのトマトだ。


ぜったいそうだよ。


「マリア、私たちトマトを食べたじゃない。もしかして、あれが原因かも・・・。」


「あっ!そうね!そうかもしれないわ!」


「・・・トマト?トマトが原因などとは初めて聞いたが?」


私とマリアは原因がわかってホッとしたが、ガー様は首を傾げる。


トマトが原因というのがよくわかっていないらしい。


まあ、普通に考えたらトマトはトマトだからね。


まさか、プーちゃん・・・もとい青竜がトマトを育ててるだなんて誰も思わないだろうし。


私は鞄の中からトマトを取り出した。


「このトマトなんです。」


そうして、ガー様にトマトを差し出す。


ガー様は不思議そうな顔をしながらもトマトを受け取って眺めはじめた。


「なにやら、普通のトマトとは違う強力な魔力を感じるが・・・。」


普通のトマトではないことは分かったようだ。


「私たちはそのトマトを食べたことがあるんです。たぶんそのトマトが原因かと・・・。」


「ふむ。確かにこれだけの魔力がこもっていればあり得るかもしれんな。して、このトマトをどこで手に入れたのだ?」


ふむふむ。と、トマトを眺めていたガー様が不思議そうに尋ねてくる。


まあ、見たことないよね。普通。


「・・・うちの畑で育ったトマトなんです。」


「ほお、その畑に魔力溜まりでもあるのか?いや、でも普通の魔力溜まりではこのトマトはあり得ないな。」


ガー様は難しそうな顔をして考え込んでしまった。


魔力溜まりがなんのことだかよくわからないけれども、普通ではないだろう。


「あー・・・。育てた人というか・・・育てた者に問題がありましてぇ・・・。」


まさかプーちゃんがトマトを育ててるだなんて言っても信じないんだろうなぁ。


「誰が育てたというのだ?」


食い付き気味にガー様が身を乗り出してくる。


まあ、そうだよね。知りたいよね。


「・・・プーちゃんです。」


「・・・はあ?」


「プーちゃんなんです。」


「だから、誰だそれは?」


プーちゃんじゃ通じないか。


「キャティーニャ村のダンジョンの最下層にいた青竜です。」


「はあっ!?なにを言っているんだ君は!?青竜がトマトを育てるだなんて聞いたことがないぞ!!」


そうですよねー。


普通育てませんよねー。でも、プーちゃんは育ててるんですよ。


ガー様は信じられないと言う表情を浮かべる。


その瞳からは私の言うことをまったく信じていないということがうかがえた。


「ええと・・・。トマト、食べてみます?」


私はガー様にプーちゃんの涙で育ったトマトを食べてみるように告げた。


別にトマト一つだったら問題ないだろう。


多少魔力の上限が上がるだけなのだから。


ガー様は興味深くトマトを見ていたが、


「いただこう。」


と、頷くとトマトに齧り付いた。


「・・・っ!!!!うまっ!!!!うまっ!!!!!うまっ!!!!!!!なんなんだ、これはっ!!!!!」


もぐもぐごっくん。と、ガー様はトマトを飲み込んで叫びだした。


どうやら想像以上にトマトが美味しかったようだ。


「っつか何このトマトっ!!あり得ねぇ!!マジあり得ねぇ!!俺の魔力の上限が上がってるだなんてマジあり得ねぇ!!マジなんなのコレ!!!」


うん。


ガー様ももれなくトマトのお陰で魔力の上限が上がったようだ。


何より何より。


これで、ガー様は信じてくれただろうか。


青竜であるプーちゃんがトマトを育てたんだと。


「おいっ!もっとこのトマトくれ!!」


ガッと身を乗り出すと右手を出してトマトを催促してくるガー様。


「これはプーちゃんが育ててプーちゃんが管理しているトマトなのでこれ以上はあげられません。ごめんなさい。」


「そこをなんとかっ!!」


ガー様はよほどトマトが欲しいのか頭を下げてお願いしてくる。


でもなー。


トマトの減りが早いとプーちゃんが拗ねるし。


「マユ・・・。もうプーちゃんここに呼びなさいよ。そうすればガー様もこれ以上トマトを請求することを諦めるでしょ。」


「う・・・ん。大騒ぎにならないかな?」


「大丈夫じゃない?ここにいるのガー様とエルフの店員さんだけだから。」


ガー様に聞こえないようにマリアとこそこそと相談をする。


で、とりあえずプーちゃんを呼んでしまおうという話になった。


まあ、ガー様プーちゃんの存在のこと信じてなかったし、トマトは請求するし、いいよね。プーちゃんを呼んでしまっても。


と、いうわけでプーちゃんに出てきてもらうことにした。


「プーちゃん、ちょっと出てきてくれるかな?」


多分、傍にいるだろうタマちゃんの空間に向けてお願いをする。


すると、


『なんじゃ?』


『どうしたのだ?』


タマちゃんとプーちゃんが仲良く揃ってタマちゃんの空間から顔だけをのぞかせた。


タマちゃんとプーちゃんの顔を見て、ガー様の顔色が一気に青ざめた。


うん。


生首だもんね。


タマちゃんの空間から顔だけ出してると生首が浮いているみたいに見えるもんね。


普通に考えたら怖いよね。


でも、ガー様は生首が怖くて青ざめたわけではなかった。


「・・・し、ししししししし始祖竜様っ!!!!・・・・・・せ、せせせせせせ精霊王様っ!!!!」

 


 


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