第157話

 


 


「お待たせ~。」


『ミッルク♪ミッルク♪』


『甘味じゃ~!!!』


ユキさんに手伝ってもらって、宴ようの料理を作り上げる。


と、言ってもユキさんに下手に調理器具を使用させると料理を爆発させてしまうので、食材を切ったり盛り付けたりをお願いして、私が調理をおこなった。


ちなみに、ユキさんってば食材を切るのが異様に早かった。


ユキさんに言わせれば私が遅いとのことだけど、あれは違う。ユキさんが絶対早い。早すぎるのだ。


だって、包丁さばきとは目に見えなかったんだけど。


気づいたら食材が切り終わってるって感じだった。


そして、タマちゃんが楽しみにしている甘味については、私はチンプンカンプンだったので、ユキさんに一任させていただきました。


調理器具を使わなければユキさんも食材を爆発させることもないしね。


あ、ちなみに調理器具と言っても包丁や撹拌機では爆発しませんでした。撹拌機はマコトさん作の魔道具だったのでなんか特殊な力が働いたのかもしれないけれども。


「あ!タマちゃんまだだめっ!」


出来上がった料理を鞄につめていると、タマちゃんが甘味・・・もといどら焼きを盗もうと忍び寄ってきた。どら焼きの前に手だけがにゅっと現れるのは少しだけ怖い。


いや、かなり怖い。


『むぅ~。妾は早く甘味が食べたいのじゃ。早く食べるのじゃ。』


「まだ駄目です。これは宴のための食べ物なんだから、呪われた大地に行って準備が整ってからじゃないと。」


『嫌じゃ嫌じゃ。妾の甘味なのじゃ。』


「いっぱいあるから皆一個ずつは食べれるよ。」


『駄目じゃ。駄目じゃ。妾がいっぱい食べるのじゃ。誰にもやらぬのじゃ。』


タマちゃんは上目遣いで涙まで溜めてイヤイヤと首を横に振る。


なんだか、とってもあざといと思うのは気のせいだろうか。


「タマちゃん。甘いもの食べすぎると太っちゃうよ?」


『・・・マユみたいにかのぅ?』


「ぐっ!!」


まったくタマちゃんは何だってそんなことをいうのだ。


私が太っていると!!


太っているだとっ!!


・・・太っているですとっ!!


「そうよ。タマちゃん。甘いものを食べすぎるとマユみたいに太っちょになっちゃうよ。こうはなりたくないでしょ?」


『う、うむ。マユみたいにお肉ぷにょぷにょにはなりたくないのじゃ。甘味は諦めるのじゃ。』


「ま、マリア酷いっ!!ってユキさん笑ってないでぇ!!」


なんで皆私のことを太っているというのだろうか。酷い。もうっ。


って、私だってちょっと太ってきたような自覚はあるんだよ。あるんだからあえて突っ込まないで欲しい。


ま、まあ。タマちゃんが甘味をあきらめてくれたからいいかな。


じゃないとこれ以上は私の精神がゴリゴリ削れてしまう。


「えっと、じゃあ。料理の準備もできたし皆で呪われた大地に転移しましょうか。」


『うむ。早く行くのだ。』


『早く甘味を食べたいのぉ。』


「タマちゃん、全部食べちゃだめだからね。」


『わ、わかっておるのじゃ。』


『マユー。ミルク持ったのー?』


「持ったよ。大丈夫だよ。」


『早く行くのー。』


「はいはい。」


私たちは騒々しくしながら、プーちゃんの転移の魔法で呪われた大地に転移したのだった。


ちなみにまだ皇太子殿下は呪われた大地についていなかった。


向こうは徒歩だもんね。


いくら私たちが料理の準備をして出るのが遅れたと言っても、転移の魔法を使ってしまえば一瞬だもんね。


「じゃあ、皆ー。椅子とテーブルをセッティングしていくよー。」


「「「「「・・・・・・・・・・・。」」」」」


返事がない。どうも皆力仕事はしたくないようだ。


ま、まあ。マーニャたちに椅子やテーブルを運べというのは無理に等しいけど。


誰も手伝ってくれないとか。そんなのってないよ。


しくしくと泣きながら鞄から携帯用の椅子とテーブルを近くに出していく。


ちなみにこの椅子やらテーブルやらは皇太子殿下が商人に騙されて高額で買ったものばかりだ。


有効活用ということで使わせていただくことにした。


「・・・だ、誰かテーブル設置するの手伝って。プーちゃん?ピーちゃん?ブーちゃん?お願いできるかな?」


『うむ?そんなのスーちゃんに頼めばすぐに終わるだろう。』


プーちゃんがそう言ってそっぽを向いた。


えっとぉ。スーちゃんに頼む?


でも、スーちゃんって一番線が細いんだよね。


こんな力仕事任せちゃって大丈夫なのかなぁ。


「スーちゃん。テーブル設置するの手伝ってくれるかな?」


不安になりながらもスーちゃんに確認してみる。


すると、私の目の前にスーちゃんが現れた。


その顔はいつもの通りとっても眠そうだった。


『いいよー。ここにあるテーブルを設置すればいいの?』


「うん。みんなが座れるように適当に並べて欲しいんだ。」


『わかったー。皆ちょっと離れててね。』


スーちゃんがそう言うので私は慌ててスーちゃんから距離を取った。


って、スーちゃん一人でテーブル設置するの?


二人とかで持った方がよくないかな。


「手伝うよ?」


『いらないー。むしろ邪魔ー。』


「・・・ぐふっ。」


邪魔だとスーちゃんに言われてしまいました。


それからはスーちゃんの土壇場だった。


風の力でテーブルや椅子を宙に浮かせて一瞬にしてテーブルと椅子が設置されました。


ほんとうにあっという間の出来事でした。


そうか。


これがわかっていたから誰も手伝おうとしなかったんだね。


うぅ。誰も手伝ってくれないって落ち込んで損したような気分だ。


そんなこんなして、皆で作った料理を並べているとやっと皇太子殿下と音楽隊の皆さんが呪われた大地に着いたのだった。


 


 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る