第143話

 


「では、皇太子殿下、ミルトレアちゃん。私たちは帝都に行ってこれらを売ってきますね。」


私は、家の中に積み込まれていた品物の約8割を指さして伝えた。


先ほど数時間かけて、家の中に積み込まれていた品々を一つずつ必要か否かを選別したのだ。


やはりというかなんというか、そのほとんどが不要なものだったのは言うまでもない。


ちなみに残りの2割は売ることもできないような粗悪品だったため、処分することにしたがとりあえずは資金調達だということになり、売れそうな物だけを帝都に運ぶことにした。


この役割は転移の魔法が使えるクロとシロの主のマコトさんと私とがおこなうことになった。


というか、皇太子殿下ってば昨日会ったばかりの私たちにここにある品物を売ってくる役を任せて大丈夫なのだろうか。もしかしたら私たちが品物を持って逃亡する可能性もあるんだけど。まあ、やらないけど。


ちょっとこの皇太子殿下ってば人を信頼しすぎているようなきらいがある。


私たちはマコトさんが持っていた鞄につぎつぎと売りに行く品物を詰め込み始める。


大きな物から小さな物まで、マコトさんの鞄は魔道具なのでいくらでも入る。


数えてみれば150もの不用品がマコトさんの鞄に収まった。


購入したときはどの品々も安くても50万ゴーニャはしたらしい。高い物には1000万ゴーニャ超えのものもあったとか。


まあ、見るからにどれもそんなに高価なものには見えないが。


「よろしくお願いします。高く売れるといいですねぇ。」


「よろしくお願いします。」


皇太子殿下もミルトレアちゃんもそう言って見送ってくれた。


ちなみに、彼らが一緒に帝都に来ないのは皇族である彼らが帝都で品物を売っているところを国民には見せられないからだ。


いや、だって見たくないでしょ。


金策のためにいらない物を売っている皇族なんて。


まあ、売る前に一度皇帝陛下のところに行くんだけどね。


私たちは、クロとシロの力を使って帝都へ転移した。


というか、またお城の中だったんだけどね。


しかも、前回と同じ部屋だった。


「いつもここですね。」


「まあ、ここはいつも人がいませんからねぇ。誰にも見つからなくていいですよ。」


お城の中でも、誰もいない場所なんてあるんだね。


ちゃんとした部屋だから誰かしら掃除とかしているのかとも思うんだけれども。埃も溜まっていないし。


「誰だっ!!」


と、思ったら見つかってしまったようです。


部屋の奥にあるドアから誰かがこちらに向かってやってきます。


隠れなければとマコトさんを見ましたが、マコトさんはにこやかに微笑んでいるだけで動こうとはしません。


「マコトさんっ!逃げないとっ!!」


「大丈夫ですよ。この部屋に入れるのは皇帝陛下だけです。皇帝陛下がいらっしゃったんですよ。」


「え?」


「マコトかっ!!?まったくビックリさせるでない。」


現れた人物はマコトさんの言う通り、皇帝陛下でした。


皇帝陛下はいきなり現れたマコトさんと私にとてもビックリしたようで、目を丸く見開き動作を停止した。


まあ、普通はそうだよね。


いくらマコトさんが転移ができると知っていても、まさか二度もこの部屋に直接転移してくるだなんて思わないだろうし。


マコトさんも念話が使えるのだから事前に皇帝陛下に連絡しておけばいいのに。


「呪われた大地を蘇らせる方法がわかりました。」


「ほんとうかっ!!」


マコトさんが切り出すと皇帝陛下は身を乗り出してきた。


そんなに身を乗り出さないで。唾、唾が当たりそうっ。


「ええ。ほんとうです。でも、残念なお知らせもあります。」


「なんだ?」


「皇太子殿下の予算の使い込みの件です。」


マコトさんは早速皇太子殿下のことを切り出すらしい。


なんかチクってるみたいだけど、あのままじゃまずいもんね。仕方がない。


「ま、まさかっ!あいつが予算を使い込むだなんてっ!!」


皇帝陛下は皇太子殿下が予算を使い込んでいると聞いて驚いているようだ。


皇帝陛下は皇太子殿下が予算を使い込んでしまっていることを知らなかったようである。


帳簿とかつけてないのかな。報告も定期的に上がってきていないのだろうか。


「いろいろと売りつけられていたようですよ。どれも安物を高値で買わされていたようです。」


「そ、そんな・・・。あの子はしっかりとしている子だったのだ。ちゃんと市場の価格もわかっていたし、不要な物を買い込むこともなかったのだ。いったい何が・・・。」


そう言って頭を抱えて崩れ落ちる皇帝陛下。


皇太子殿下は昔は今と違っていたのだろうか。


「ちなみに、ミルトレアちゃんの存在はご存じですか?」


「ミルトレア?誰だい?それは?」


マコトさんが頭を抱えてしまった皇帝陛下にミルトレアちゃんのことを確認する。


すると、皇帝陛下は頭を抱えながらも【ミルトレア】という名前にはピンっと来ていないようで首を傾げている。


おかしい。


ミルトレアちゃんは皇太子殿下の娘なのに。


なぜ、皇帝陛下はミルトレアちゃんを知らないの?


 


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