第136話

 


『おにゃかいっぱいなのー。』


『食べたら眠くなったのー。』


『ベッドふかふかなのー。』


マーニャたちはお腹がいっぱいになったのか、ふかふかのベッドに横になったり、口の周りを右前足で擦ったりしながらグルーミングをしている。


それにしても、この集落に似合わず良いベッドを使用しているようだ。


やっぱり皇太子殿下だからなのかな。


良いものを使っているようだ。


「そうでしょ。そのベッド高かったんですよー。2~3年前でしょうか。この集落に突然商人がやってきましてね。このベッドを勧めてきてくれたんですよ。ふかふかでとても寝心地が良かったので思わず購入してしまいました。」


いやぁ。ははは。


と、皇太子殿下は笑った。


笑ったが、私とマコトさんの表情は思わず引きつってしまった。


商人がわざわざこんな辺境の栄えているとは言えない集落までわざわざ来るはずがない。


しかも、こんな高級そうなベッドを携えて。


明らかに商人は皇太子殿下がここにいることを知ってやってきたのだろう。


「おいくらでしたか?このように素晴らしいベッドでしたら10万ゴーニャくらいでしょうか?私も欲しくなってしまったのでその商人の名前とだいたいの金額を教えていただけませんか?」


マコトさんが明らかな作り笑いを浮かべて皇太子殿下に尋ねている。


明らかに購入する意図はなさそうだ。


ちなみに1ゴーニャは10ニャールドにあたるらしい。


10万ゴーニャなら日本円にすると100万円。


まさかまさかの購入価格である。


でも、皇太子殿下だったらそのくらい高い寝具に寝ててもおかしくはないのかな。


なんたって帝国の皇太子だし。


「いえいえ。1000万ゴーニャだったんですがね、商人と馬が合って950万ゴーニャまで値下げてくれたんですよ。ええ、いい買い物でした。はっはっはっ。」


皇太子殿下はそう言ってホクホク顔で笑った。


・・・。


思わずなんとも言えない顔をしてマコトさんに視線を向ける。


マコトさんの顔は相変わらず引きつっていた。


うん。この皇太子殿下にお金を使わせたら駄目だ。


誰かこの皇太子殿下を管理してもらう人をつけてもわらないと。


明日にでも、皇帝陛下にお願いしてみようかな。


まあ、皇帝陛下にそんなに気軽に会えるかわからないけれども。


 


 


 


「あー。話は変わりますが、明日からこの呪われた大地を調査させてください。」


「いいですよ。でも、神竜がいるから調査もなにも、神竜に呪いを解いていただくようにお願いすればいいだけのことですよ。」


本題にやっと入る。


が、皇太子殿下はのほほんとそんなことを宣った。


皇太子殿下の言っている神竜ってプーちゃんのことでしょ。


でも、呪いをかけた神竜がプーちゃんとは限らないとは思っていないのだろうか。


チラリッとプーちゃんに視線を向ける。


プーちゃんはたらふく美味しい饅頭を食べてご満悦なのか、ベッドの上でお腹をさすって満足気な顔をしている。


「プーちゃん、呪いを解いてもらえるかな?」


『む。我は呪いなどかけておらぬから無理だ。』


「無理だそうです。」


プーちゃんからは呪いを解けないとすぐに答えが返ってきたのでその旨を皇太子殿下に伝える。


すると、皇太子殿下は大きく目を見開いた。


「そ、そんなっ・・・。もう、他に手がないんですっ・・・。」


ガクッと俯く皇太子殿下とミルトレアちゃん。


う~ん。


もっと調査をしてみればなんかわかると思うんだけどなぁ。


『忘れておるのか?プーちゃん。はるか昔お主が妾たちにこの地を誰も住めぬようにしろと命令したではないか。』


は?


タマちゃん何言っているの?


タマちゃんはこないだ卵から孵化したばかりだよね・・・?


 


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