第123話
私は鞄の中から、ひまわりの鉢植えを取り出した。
このひまわりがあれば、私が抱っこしている可愛らしい三毛猫の本来の姿があらわになるだろう。
まあ、化粧水飲んでたらなんだけどね。
大人しく抱っこされている三毛猫と一緒にひまわりの下に移動する。
三毛猫は「にゃあ。」と鳴くと、ペロペロと私の頬を舐めてきた。
く、くすぐったい。
しかも、お髭があたってこそばゆい。
その三毛猫の姿がゆっくりと光を帯びていく。
「きゃっ!!」
「ありがとうございます。やっと喋れるようになりました。。マユさん、ご無沙汰でしたね。お元気でしたか。」
「え、えっと・・・。」
三毛猫の姿はひまわりの力によって成人男性の姿に変わりました。
やっぱり、化粧水が関係していたようです。
どうやら私の知り合いみたいなんだけど・・・。誰だったっけ?
見覚えがあるような無いような。
「私がお渡しした精霊の卵は孵化しましたか?」
「えっ!?」
記憶をたどって精霊の卵のことを思い出す。
「あ!ハーメルさん?」
「ええ。」
思い出した。
とても不思議な男性のハーメルさんだ。
霞がかっていた頭の中がスッキリとしたような気がした。
どうして今まで忘れてしまっていたのだろうか。
水色の精霊の卵をくれた人だったのに。
「さあ。5体の精霊は孵化出来ましたか?」
「え?」
ハーメルさんはそう確認してくる。
どうして、ハーメルさんは精霊が5体、私の元にいるということを知っているのだろうか。
ただのピンクの卵を妹さんのために探し求めていた人だよね?
違うの?
もしかして、それだけじゃないの?
「不思議そうな顔をしていますね。知っていますか?マユさん。金色の精霊の卵の元に、他の4つの精霊の卵が集まってくるのです。即ち金色の精霊の卵を持っている人のみが5体の精霊を孵化させることができるんです。」
「は、はあ・・・?」
確かに金色の精霊の卵持ってたけど。
だけど、あれは王都にいる鑑定士さんとマリアとマーニャ達しかしらないはず。
間違ってもハーメルさんに金色の卵を持ってますだなんて言ってないし。
「ああ、なぜ金色の卵がマユさんのところにあるか僕が知っているかって?ふふっ。それなら当然ですよ。僕がマユさんの鶏小屋に金色の卵を忍ばせたんですから。」
「ええっ!!?」
ちょ、ちょっと待って話についていけない!!
金色の卵もハーメルさんが置いて行ったって、ハーメルさんっていったい何者なのっ!?
そういえば、マリアともハーメルさんについて話したな。
確か、鑑定してみればよかったと。
改めてハーメルさんをジッと見つめて鑑定してみる。
ニコニコと笑っているハーメルさんの顔が私の顔を覗き込む。
「鑑定できましたか?」
「・・・いいえ。できませんでした。」
なんというか、マリアと同じく私が考えていることがわかるようだ。
ハーメルさんの鑑定はできなかった。
出来なかったというより、鑑定自体はできたが結果が表示されなかったのだ。
「では、ヒントです。僕の姿は認識できていますか?僕の姿は自由自在に変化できるのです。ハーメルとしてではなく、別の姿でも貴女にお会いしているんですよ。」
「ええっ!?」
いったいどこで!?
全く覚えがないんだけれども。
自由自在に姿を変えられるってことは、会っていてもわからないじゃないか。
いったい私はどこでハーメルさんと出会ったのだろうか。
「ヒントその2。僕は貴女に精霊の卵を集めて育てて欲しいと言いました。」
にっこりと笑顔をつくるハーメルさん。
その言葉に私は混乱をする。
だって、だって!そうお願いしてきたのって!!
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