第112話

いきなりドアが開いて、年配の男性が部屋に入ってきた。


まずいっ!見つかった!!


と焦るも、マコトさんは焦った顔一つ見せない。


私たちは不法入国したあげくに、不法侵入してるのに。


なぜ、そんなにマコトさんは落ち着いていられるのだろうか。


「あ、お邪魔してます。」


マコトさんは部屋に入ってきた男性にそう告げた。


いやいやいや。それで、許されないでしょ。普通。


ここお城の中だし。


「………。」


目の前の男の人もマコトさんの態度に驚いているようだ。


切れ長の目を見開いて、マコトさんのことを凝視している。


それはそうだろう。


なんたってお城の一室に明らかに他国の人間がいるんだから。


驚かない方が無理だと言えよう。


マコトさんは、それでもめげずに男性の前でにこやかに手を振っている。


私は心臓がバクバクと恐ろしいほど、脈打っているのに。


「マコトさんっ!!」


見つかってしまったからには、逃げないと。そう思ってマコトさんに声をかけるが、マコトさんはただにこやかに笑っているだけだった。


目の前にいる男性の目が細められる。


やばいっ!


絶対捕まる!!


マコトさんの腕を掴んで思いっきり引っ張るが、マコトさんはびくともしなかった。


どうして!?


どうしてマコトさんは慌てないの!?


「………マコトか?変わらないな。」


「へっ?」


マコトさんと、この目の前の男性は知り合いだったの?


なんだか、男性の目元が少しだけ和らいだような気がした。


「ええ。おひさしぶりですね。陛下もお変わりないようでなによりです。」


どうやら、知り合いだったみたいだ。だから、見つかってしまったにも関わらず、マコトさんもにこにこしていたのか。


「へっ!?へいかっ!!」


というか、マコトさんの言葉に反応して、思わず声をあげてしまった。


だって、だって、だって。


陛下だって。


マコトさんこの男性のことを陛下って言った!


な、なんで、どうして帝国に来て一番最初に会った人が陛下になるんだろう。


もう、わけがわからないのだけれども。


「マコトは、いつまでも若いままだな。羨ましいよ。」


「いえ。私な年相応に年をとって行きたいと思いますよ。僕だけが取り残されてしまっているような気がして。」


「はははっ。相変わらずだな。ユキは元気なのか?勇者ハルジオンと結婚したと聞いたが。」


「ええ。元気にしていますよ。」


マコトさんと皇帝陛下がにこやかに言葉を交わしあう。


随分親しげだ。


それに、皇帝陛下は、ユキさんのことも知っているようだ。


って!!


ユキさん勇者と結婚したの!?


えっ!?でも、ユキさんの旦那さんって、村長さんだよね!


あれ!?


え?村長は勇者だったの!?


村長さんってば、ぜんぜん強そうな感じしないんだけど。

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