第109話

 


『ここは・・・どこなのだ?』


眩い光とともに超特急で転移させられ飛ばされたプーちゃんは荒野に投げ出されて途方にくれていた。


そこは見渡す限り何も無い荒野。


ただ無機質な地面に、大小さまざまな石が転がっている。


草は所々に生えてはいるが、水分が少ないのか所々地割れを起こしている。


『マーニャ様ぁ~!!クーニャ様ぁ~!!ボーニャ様ぁ~!!』


大声で呼びかけてみるが、反応する者はいない。


『マユ殿でも良いから返事をするのだぁ~~!!』


投げやりに叫んだプーちゃんは、その場にベタッと張り付いて涙を流し始めた。


『なんで・・・なんで我はこんなところにおるのだ・・・。我が何をしたというのだ・・・。』


ダバダバと国宝級の竜の涙があたりの地面にしみこまれていく。


辺りの地面はプーちゃんの涙を吸い込んで淡く輝いたが、誰も気付いた者はいなかった。


『・・・転移できぬ。』


プーちゃんは、マーニャたちの元に戻ろうと転移をしようとするが、なぜかマーニャがどこにいるか感じることができない。それゆえ、転移することができない。


また、王都に転移しようと思っても、何故だかレコンティーニ王国の王都の位置がわからず転移することが叶わないのだ。


そのこともまた、プーちゃんを落ち込ませる要因となり、プーちゃんは涙が枯れるまで作物がまったく育たず、動物もいないような荒野で鳴き続けた。


泣いて泣いて泣き続けていたら、人の気配を感じて泣きはらして真っ赤になった目で振り返った。


そこには、クワを構えた一人の薄汚れた少女がプーちゃんを睨むようにして立っていた。


だが少女の身体は小刻みに震えており、プーちゃんを怖がっている様子が伺える。


しばし見詰め合うプーちゃんと少女。


最初に口を開いたのはプーちゃんだった。


『いったいここはどこなのだ・・・?』


泣きすぎて枯れてしまった声で尋ねれば、一定の距離を保ちながら恐る恐る少女が答える。


「ここは・・・私の畑よ!で、出てって!」


『畑・・・?作物は育ちそうにない土地のようだが?』


クワで耕しても硬く栄養分の無い土地に畑などできるはずがない。マユの畑を見ているプーちゃんからすると、ここがとても畑には見えなかった。


なにより雑草が僅かにしか生えていないくらいにしか思えない。


「それでも畑なのよ!」


棒のような手足をした少女の目に涙が薄っすらと浮かぶ。


『な、泣くでないっ!我が泣かしたみたいであろう!ま、マユに怒られるではないかっ!!』


あわあわと慌てながら、プーちゃんは目の前の少女をなんとか泣き止ませようと近づくが逆効果になり、少女は今度は怖くて泣き出してしまった。


「う、うわぁああああ~~~~んっ!!!」


少女のけたたましい鳴き声が辺りに響き渡り、少女を心配した村人たちが武装をしてやってきた。


「わ、わしらのミーちゃんになにをしたっ!!」


「ミーちゃん大丈夫?」


「は、はやくどこかにいけっ!」


「許さないんだからっ!!」


『ま、待ってくれ!!我が悪いのではないっ!!ま、マユ殿ぉ~~~~!!助けてくれぇ~~~~!!!』


村人に囲まれたプーちゃんは、泣きながらマユに助けを求めたのだった。


 


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