第107話
私達は、シロとクロの力を借りて、帝国まで転移してきた。
シロとクロはプーちゃんとは違ってうっかりミスをしないのでちゃんとに帝国の近くの人気のない茂みに転移してくれた。なんだかちょっとだけ物足りなかったのは気のせいだろう。
ちなみに、なぜ帝国の中に直接転移したのではなく、帝国の外側に転移したのかというともし、門が閉鎖されていなくて出入りできるような状態であれば真正面から入った方が政治的に問題にならないというマコトさんの理由だった。
いや、むしろマリアがスパイとして入国している時点で政治的な問題に発展しそうなんだけど・・・とは思ったがそこは触れないでおく。
茂みの中から息を潜めて帝国に入国するための門に視線を巡らせる。
門の近くには帝国に入れない人たちでごった返していた。
念のため、マコトさんが飄々とした態度で、門の付近にいる人々に話を聞いてきてくれたが、どうやら5日間ほど前から他国からの旅人や移住者の入国を制限しているようだ。また、逆に出国も制限しているようである。こちらは、自国の人間も他国の人間も出国できないようになっているらしい。
その理由は他国の人間には伝えられていないようで、なんで入国できないのかを知る人はいなかった。
しかしながら、皇太子に関する良くない噂が他国にも広まって来ていたこともあり、自国内でのお家騒動が原因ではないのかとちらほら聞こえてきたとか。
「やっぱり、帝国内に入るには転移するしかありませんねぇ。」
「そうですね。」
マコトさんは思案顔で告げる。
マーニャたちも真剣な表情をして帝国を見つめていた。
「ですが、猫様たちには危険な国になります。ここは初代女王の加護がない国ですから、十分に注意して進みましょう。」
『はいなのー!』
『・・・マユ、抱っこ。』
『・・・マユ、リュックにいれてなの。』
マコトさんの言葉にマーニャが元気よく返事をするが、ボーニャとクーニャは危険だということを感じて抱っこして欲しいと言ってきた。もちろん可愛いからすぐにボーニャを抱っこして、クーニャをリュックに入れたが。
「・・・マユさん。それじゃ両手が塞がってしまいますし、リュック盗まれたらどうするんですか。ここは平和なレコンティーニ王国ではないんですよ。」
「え、いやその・・・。」
でも、ボーニャ抱っこしていると暖かいんだよ。しかも、ふわふわだし癒されるというかなんというか。
「良い案ないですよね!ね!ね!!」
こちらをねじ伏せるがごとく、勢い良くマコトさんが問いかけてくる。
こちらにぐっと身体を寄せてきて、顔も近づけてくるから唾がかかりそうで怖い。
「え・・・あう。まあ・・・。」
「そうですよね!ふふふっ。ここで僕の出番ですね!お勧めの魔道具があるんですよ。ふっふっふっ。」
そう言ってマコトさんは不敵な笑みを浮かべた。
そうか。そう言うことか。
なんだかんだ言ってマコトさんってば魔道具を使ってみたいだけなんだな。
マコトさんは信用しているけれども、マーニャたちに害の無い魔道具なのだろうか。そこがとても気になる。
それに、マコトさんのテンションも気になるし。
なんだか、マーニャたちを任せるのが危ないくらいのテンションだよね。
抱っこしていてもリュックの中に入っていても危険なことには変わりない。
マーニャたちの安全を確保するためにはマコトさんの提案に乗るしかないのかと、マーニャたちの姿を見ると、シロやクロを始めマーニャたちも全員首を横に大きく振っていた。
どうやらマーニャたちもマコトさんの魔道具の世話になるのは怖いと思っているようです。
『・・・妾の空間に隠れるのじゃ』
さて、どうしたものかと悩んでいると、耳元で不意に声がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます