第83話

 


ユタさんの剣がプーちゃんに当たる度、つるりんっと剣が滑ってしまう。


それは、プーちゃんに乳液を飲ませたからだと思い当たった。


「結構強烈ね・・・。」


滑るとは聞いていたが、まさか剣でも切れないだなんて。


これが、矢でも一緒なのだろうか。


ふと、そんなことを思ってしまったら、「ヒュンッ」という音と供に矢が勢い良くプーちゃんに当たって「ぬめりんっ」と滑って地面に落ちた。


「あ、落ちた・・・。」


矢でもダメなのか。


って、プーちゃんってば矢が飛んできたのなら立っていないで避けなきゃダメじゃん。


普通の矢がダメだったら火矢が飛んできたらどうなるんだろう。


矢は落ちても火はつくのかな。


なんて思ってしまったら「ヒュンッ」という音と供に火矢が勢い良くプーちゃんに当たって「ぬめりんっ」と滑って地面に落ちた。


地面に落ちた火矢はスーちゃんにより、火が消された。


にしても、乳液の効果すごいな。火まで無効化してしまうだなんて。


でも、プーちゃんってば何で避けないんだろう。


「プーちゃん。なんで避けないの?」


『あのような矢など私には刺さらないのだっ。』


「あ、そう。ちなみに剣を避けないのは?」


『あのような鉄の塊では私は切れぬのだっ。』


えっへんと威張るように言うプーちゃん。


そうか、そうか。


どうやら乳液の効果がなくとも、剣や矢ではプーちゃんに傷をつけることはできなかったようである。


これって乳液いらなかったよね。どう考えても。


『ちなみに我に普通の剣で切りつけると剣が我の鱗に負けてポッキリ折れる。』


「へぇ~。プーちゃんの鱗って硬いんだねぇ。」


って、言ってから思った。


もしかして、女王様ってば兵士達の剣を折られたくないからプーちゃんに乳液を飲むように私に勧めたわけじゃないよね・・・?


だって、最初っからプーちゃんには物理攻撃ほぼ効かないようだし。


『伝説の魔剣くらい用意しておかぬと我は切れぬのだっ!それかレベル120を超えた冒険者なら通常の剣でも我に傷をつけることは可能である。』


「へぇ~。魔剣か・・・。見てみたいな。」


レベル120を超える冒険者ってのはまずいないらしい。


だいたいはレベル100で限界を向かえるそうだ。


それにレベル100の試練としてプーちゃんと戦って勝たなきゃレベル101以上に上がれないらしい。


ただの剣でプーちゃんに傷一つつけられないということは、レベル101以上に上がるためには伝説の武器を手に入れるか、伝説の魔法を習得するかしないといけないらしい。


もしくは猫様に攻撃してもらうか、だそうだ。


だが、猫様に命令をするのは誰であっても難しいのでまず、プーちゃんが猫様の機嫌を損ねない限りは攻撃されないらしい。


まあ、猫も臆病な性格をしているので、すぐに逃げてしまうからなかなかプーちゃんが傷をつけられることはないらしい。


プーちゃんって何気に最強なんだよねぇ。


タマちゃんっとどっちが最強なのだろうか。


 


プーちゃんと乳液の効果でこちら側には兵士達の攻撃がいっさい効かない。


よって、兵士達が疲弊して攻撃するのをやめるのを座って待つことにした。


プーちゃんが安全な結界も張ってくれているので、ここらでランチタイムとすることにした。


ユキさんから貰ったおにぎりがここで役に立ったよ。


ありがとうユキさん。


「皆、お昼にしよう。」


そう言って私は携帯食として用意したおにぎりと昨夜の残りのハンバーグを耳パンに挟んだサンドイッチを取り出した。


もちろんマーニャたちにはダンさんにお願いして作ってもらった特性のご飯を取り出す。


ご飯を取り出すと、マーニャたちも大精霊たちもわらわらと寄ってきた。


もちろん。プーちゃんもだ。


攻撃されても微動だにしないプーちゃんはトマトを頬張ってご満悦状態である。


タマちゃんはマーニャに「嫌い」と言われたことが堪えているのか、空間から白く細い手をだしておにぎりを一つ手に取るとおにぎりとともに手はすぐに掻き消えた。


マーニャは少しずつご機嫌が回復しているのか、ダンさん特性のご飯をクンクンと匂いを嗅いでから一口口をつけて、美味しいと感じたのか、二口目からはもりもり食べ始めた。


クーニャとボーニャはマーニャが食べ始めるのを確認してから自分の分のご飯をもりもり食べている。が、時折クーニャから視線が送られてくる。


その視線は「ミルクはあるんだよね?」と言っているようだった。


もちろん、クーニャたちには食後に猫用ミルクを用意してあげたのは言うまでもない。


そして、クーニャがミルクを飲むのが遅いマーニャのミルクも横取りしていたのは言うまでもない。


マーニャのことを心配していても、クーニャにとってはミルクは別格だったようだ。


さて、お腹も膨れたし、攻撃もやんだみたいだから兵士と交渉でもしようかと振り向いたらこちらに向かって女王様が歩いてくるのが見えた。


手になにやら煌びやかに装飾された剣を持って。


あまりにも目立つ女王様の剣をなんとはなしに鑑定してみて愕然とした。


「で、で、で、伝説の魔剣っ!?」


 


 


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