第72話

 


『我は蜥蜴などではないっ!蜥蜴と一緒にするでないっ!』


ピーちゃんの「プーちゃんが火蜥蜴。」発言にプーちゃんは憤慨して目を吊り上げている。


その口からは今にも火を吐きそうだ。


『怒るなって。でも、過去に人間どもに火蜥蜴って言われていたことは事実だろ?』


ピーちゃんはプーちゃんの頭をポンポンと軽く叩いて慰めるかのように優しく尋ねた。


『・・・不本意だが。』


憮然とした表情で渋々と答えるプーちゃん。


あ、本当に火蜥蜴ってプーちゃんだったんだ。


でも、火炎袋って何?


プーちゃんに火炎袋があるの?


口から火を吐くんだから、口の中に火炎袋があるってこと?


それって、プーちゃんを解体しなきゃならないのっ!?


鱗をもらうとか、涙を貰うとかなら躊躇はしないけれど、火炎袋をもらうとなると躊躇せざるを得ない。


プーちゃんに痛い思いをさせるわけにはいかないし、解体なんてしたらプーちゃん死んじゃうかもしれないし。


『なら、マユが欲しがっている火炎袋の一つや二つくらい渡してあげなよ。渡してやったってひまわりがあるから、すぐに回復するだろ?減るわけじゃあるまいし。』


『・・・。火炎袋ってなんだ?』


ピーちゃんがプーちゃんを説得しているが、ピーちゃん何気に酷いんだけど。


ひまわりがあるから、すぐ回復するからって・・・。それでいいの?


っていうか、プーちゃん自分の身体のことなのに火炎袋を知らないってどういうことだろうか。


『え?俺も知らね。マユ、火炎袋ってなんだ?』


おおう。


どうやらピーちゃんも火炎袋が何かまでは知らなかったようだ。


まあ、急ぐわけでもないし、王都に言ってマコトさんに会ったら尋ねてみようかな。


「私もよくわからないの。マコトさんなら知っているはずなんだけど・・・。」


もしかしたら、マコトさんの言う火蜥蜴ってプーちゃんのことじゃないかもしれないし。


やっぱりプーちゃんの身体を切り貼りするのは抵抗あるから、プーちゃんのことじゃないといいんだけど・・・。


「にゃーー!!にゃっ!にゃにゃにゃーーー!!」


プーちゃんとピーちゃんと話していると、突然トンヌラさんがやってきて私たちの間に割り入ってきた。そうして、私の足に飛びついてきた。


「痛い痛い痛いっ!!!」


爪を立てて足に飛びついてきたものだから、爪が足に突き刺さって地味に痛い。


「にゃー!にゃにゃー!!」


トンヌラさんは何かを訴えるように、泣き続けている。だが、何を言っているのか誰にもわからない。


クイッと焦れたトンヌラさんが、私の服の裾を噛み引っ張る。


そして、見た目以上に力強く私を引っ張っていく。


「ちょ、ちょっと待って・・・。ついて行けばいい?」


「にゃ!」


どうやらついて来て欲しいところがあるようだ。


お腹でも空いたのかな?


そう思いながらも猫になってしまっているトンヌラさんの後ろについて歩いていく。


狭い部屋なのですぐに目的地には到達した。


そこは、錬金釜の前だった。


「あ、そっか。そろそろ化粧水ができる頃合だね。」


「にゃっ!」


どうやらトンヌラさんは早く化粧水の効果を確かめろという催促だったようだ。


そうだよね。トンヌラさんもいつまで経っても誰とも意思疎通ができないのは苦痛だものね。


早く人間の言葉をしゃべれるような化粧水が作成できればいいんだけれども。


そう思いながら錬金釜の蓋を開け放った。


 


・・・。あ、あれ?どうして、今回は誰も飛んでこないんだろう。


普通に開いちゃったよ。


錬金釜の蓋。


おかしいなぁ。いつも化粧水を作ったときは、誰かしらが魔力を込めてくれるのになぁ。


どうしたのかなぁ。


 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る