第70話
私たちは、村長さんの家にあるマコトさんが作成したというご飯を炊くための魔道具を借りてご飯を炊いた。
ちなみに、この魔道具、思いっきり見た目が炊飯ジャーだった。
さすがマコトさん。
食べ物を暖めるという魔道具も見せてもらったが、これもまんま電子レンジだった。
マコトさんがいると便利だなぁー。
材料が集まったらマコトさんに作ってもらえないか確認しよっと。
「まあ!お米は炊くとふっくらと膨らむんですね。しかも、もちっとしていて、ほんのり甘味があるわ。これは、とても美味しいわね。」
炊きたてのご飯をサラさんと試食していると、興奮したようにサラさんが目を輝かせた。
どうやらサラさんのお気に召したらしい。
「美味しいですよね。これを主食にすると毎日食べても飽きないんですよ。」
「まあ!食パンと同じね。これは食堂で出しても売れるかもしれないわ。ただ・・・問題はお米を炊く魔道具ね。材料の入手が難しそうだわ。」
「ふわぁっ!」
サラさんのお店に魔道具が導入されれば、毎日お店でご飯が食べれる!これはとても魅力的な提案である。
実際問題として、お米を手に入れる方法が私にはわからないのだ。
だが、サラさんは市場で見たことがあるという。
市場は毎日開かれるわけではないし、お米を買い忘れてしまったら次の市場が開催されるまで待たなければいけなくなる。
サラさんが定期的にお米を仕入れてくれれば楽だなぁ。
それに、ダンさんだったらご飯に合うおかずも開発してくれそうだ。
じゅるりっ。
想像しただけで、涎が出てきそうになる。
うん。
これは、もうサラさんにプーちゃんから取れる素材を渡して魔道具を購入してもらう他ないだろう。
プーちゃんには確認してないけど、いいよね。美味しいものが食べれるようになるんだもの。きっとプーちゃんも許してくれるよね。
特にプーちゃんの涙はすぐに採取できるし。
「プーちゃんから取れる素材でしたら融通いたしますよ。ただ、火蜥蜴の火炎袋というものがどうやったら手に入るのかはわかりませんが・・・。」
「まあ!いいの!是非お願いするわ。火蜥蜴の火炎袋は私もよくわからないの。冒険者の方なら詳しいとは思うんだけど・・・。」
ふむふむ。
冒険者さんに聞けばいいんだね。
簡単に入手できるものならいいんだけど、ユキさん曰く素材が入手困難ということだから、なかなか手には要らないものなのだろうか。
まずは、聞き込み調査だね。
「火蜥蜴の火炎袋は私の方でも調べてみます。手に入るといいんですが。そうしたら、是非ご飯を作って食堂で提供してくださいね。楽しみにしてます!」
「ええ。是非。」
サラさんと私は固く握手を交わした。
その横でユキさんと村長さんが「はぁ・・・。」と同時にため息をついた。
「火蜥蜴はなかなか見つからないわよ。」
「そうじゃのぉ。蜥蜴とは言っているが、火蜥蜴はでかいぞ。プーちゃんくらいあるなぁ。それでいて警戒心が高いからなかなか姿をみせない。」
「そうねぇ。私ももう10年以上は火蜥蜴が見つかったと聞いていないわねぇ。」
「むっ。わしは30年はきいておらんぞ。」
「あら、そんなに見つかってなかったんでしたっけ・・・?ほほほ。忘れてしまいましたわ。でも、マコトが魔道具を作ってくれたのは50年前だから、その頃には火蜥蜴いたのよね。確実に。」
「そうじゃのぉ。」
ユキさんと村長さんの会話がずらずらと続いた。って、二人の会話を聞いている限り、火蜥蜴に出会うことが難しそうだ。
しかも、火炎袋っていうことは火蜥蜴は火を吐くのだろうか。なかなかに怖そうな存在であるようだ。
う~ん。見つかるかなぁ。
でも、ご飯毎日食べたいしなぁ。
「まあ、気長に探してみます。」
「そうね、それがいいわ。」
「あ、マユさん。私、魔道具の作成急がないので見つけたら教えてください。」
それにしても、そんなに貴重な素材で作った魔道具はいったい購入するとしたらいくらになるのだろうか。
そんな高級魔道具で作ったご飯はお茶碗いっぱいいくらになるのだろうか。
思わず計算しそうになり、慌ててやめる。
だって、計算してしまったらマコトさんに気軽にお願いすることができそうにないからだ。
「・・・マリアを探しに王都に行くのでそのついでに調べてきます。」
そういうことになった。
私は王都まで行くのに持っていったら?とユキさんの好意により、塩むすびを大漁にもらった。
炊きたてご飯でつくるシンプルな塩むすびは美味しいんだよね。
今日の夕飯にもみんなで一つずつ食べよっと。
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