第58話

『グレープ味のぉ~化粧水のぉ~効果はぁ~・・・。』


「こ、効果は・・・?」


溜めるようにいうベアトリクスさんの言葉に、ゴクリッと息を飲む。また、変な効果じゃないよね?


『浄化作用がぁ~ありますぅ~。体内にぃ~溜まったぁ~老廃物を~綺麗にぃ~してくれますぅ~。』


ベアトリクスさんの言葉に思わずガクッとずっこける。

お、思ったよりもまともな効果だった。てっきりまた、猫の尻尾が生えてきたり、耳が生えてきたりするのかと思ったよ。

なんだか、思った以上のまともな効果だったから安心した。

この効果ならば、ご近所さんに配っても問題ないだろう。

身体に害はないみたいだしね。むしろ、喜ばれそうだ。


「そうなんだ。よかったまともな化粧水だった。それなら、ベアトリクスさんに1本あげるよ。」


『やったぁ~!ありがとうございますぅ~。』


ベアトリクスさんの声が弾んでいる。目の前に化粧水を両手で握りしめてピョンピョン跳ねているベアトリクスさんの姿が一瞬映った。

あれ?と思って目を擦る。

今度はベアトリクスさんの姿は映らず、ただの私の部屋の中が映された。

どうやら気のせいだったようだ。


『つぎはぁ~甘酒味のぉ~化粧水ですぅ~。ってぇ~、美味しそうなんですけどぉ~。甘酒ってぇ~一度ぉ~飲んでみたかったんですよねぇ~。高級なんですよぉ~、甘酒ってぇ~。』


ベアトリクスさんの説明にほうほうと頷く。甘酒が高級だとは知らなかった。

なんでもお米自体の供給量が少ないため、甘酒の原料である麹の量自体の流通も少ないそうだ。そのため、どうしても高値になってしまうそうだ。

今は一部の貴族しか購入することができないほどに、高騰しているとか。

甘酒って栄養価高いしね。

でも、高級な味ならばベアトリクスさんが欲しがっても可笑しくないのに、なぜこれを選ばなかったのだろうか。


『肝心のぉ~効果ですがぁ~。猫語しかぁ~話せなくなりますぅ~。』


「へっ?」


おっといけない。

思わず変な声がでてしまった。

猫語って?

猫語ってなに!?

猫としゃべれるってこと?そういうこと?


『にゃ~としかぁ~言えなくなっちゃいますぅ~。でもぉ~、ご安心ください~。猫様とぉ~言葉はぁ~通じませんのでぇ~。』


「ぉぃ・・・。」


その化粧水、なんのメリットもなくないか?だって、猫語っていったって「にゃー」としか言えないんでしょ?それってことは、人間と意思疏通をとるのも大変だろうし、猫との意思疏通ができるわけでもない。

まるっきり意味がないではないか。


『使い道がぁ~ないですよねぇ~。下手にぃ~飲んだらぁ~困ったことにぃ~なっちゃいますしねぇ~。』


確かに使い道がない。これは、飲まずに肌に塗るだけにとどめた方がいいだろう。となると、これは配れない代物だなぁ。


『コーラ味のぉ~ものはぁ~、猫耳がぁ~生えてきますぅ~。これはぁ~もう~お馴染みですねぇ~。コーヒー味のぉ~ものはぁ~今度はぁ~前回とぉ~違ってぇ~目がぁ~猫化しますぅ~。』


「ぶっ・・・。味は前回と一緒でも効果違うんだね・・・。」


『そうなんですよぉ~。びっくりですよねぇ~。おもしろいですねぇ~。』


と、いうことは今後同じ味の化粧水ができたとしても、効果がわかるまでは飲まない方がいいってことだよね。前回と同じ効果になるとは決まっていないし。

これは、注意しておかなければ。

でも、人間の顔に猫の目って違和感がないか・・・?これ、需要あるの?


『最後はぁ~パクチー味のぉ~化粧水ですねぇ~。』


パクチー味。そう、パクチー味なんてものができてしまったのだ。

ちなみに私はパクチーのあの味がどうしても苦手で食べることはできない。

よって、この化粧水も私は飲めないだろう。

パクチーって独特の味だから好き嫌いあるだろうしね・・・。


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