第38話

 


今日はお天気もいいし。山に化粧水の材料である薬草と山の湧き水を採取してこようと思う。


一人で行く気まんまんだったんだけど、プーちゃんが一緒に来てくれた。


なんでも、マーニャたちに一緒に行けと言われたらしい。


ちなみに、マーニャたちは家でまったりと食後の惰眠を貪っていた。


猫って寝るのが仕事みたいなところあるしね。


「プーちゃんもやりたいことがあっただろうに、ごめんね付き合ってもらって。」


『構わぬ。それに、マーニャ様に逆らうだなんて恐れ多くてできぬのだ。』


「あはは。そうだねぇ。」


プーちゃんは本当にマーニャたちには頭が上がらないようだ。特にマーニャに弱いらしい。


のんびりとプーちゃんと山道を歩いていく。


途中途中に薬草があったので、採取させていただく。


でも、全部は取らない。


だって、片っ端から採取してしまって、薬草が全滅しましたってことになったら大変だからね。


何事も適度が大切。


『おお!あれは!!』


ぽてぽてと歩いていると、前方を歩いていたプーちゃんが急に声をあげて足を速めた。


「なにかあったの?」


慌ててプーちゃんを追いかける。


プーちゃんは地面にしゃがみこんで、なにやら見つめている。


プーちゃんの視線の先を見ると、不思議な形の葉を持つ植物があった。


『とても珍しい植物なのだ。ヌメリン草と言うのだ。』


「ヌメリン草・・・あまり嬉しくない名前だね。」


『とっても良い香りなのだ。』


プーちゃんはヌメリン草に顔を近づけてクンカクンカと匂いを嗅いでいる。


その表情は恍惚としていた。


そんなに良い香りなのだろうか。


私は同じようにヌメリン草に顔を近づける。


するとなんとも良い香りがした。


まるで、洗いたてのシャツにほんのり花の香りを足したような匂いである。


この匂いは、ちょっと癖になるかもしれない


ちょっとだけ・・・と思ってヌメリン草に手を伸ばす。


  ぬめっ


「うをっ!!」


滑った!


この滑り!見事である!


じゃなくって、ぬめぬめしてあまりさわり心地よくないんだけど。


香りに反して触った感じは最悪だ。


でも、香りはとても良いから何かに使えないかな。って、触っちゃったけど毒性があったりしないよね。かぶれたりとか。ヌメリン草を触った手で食べ物食べちゃダメとか。


生えているヌメリン草をじぃっと見つめ鑑定してみる。


「え?」


『どうしたのだ?』


プーちゃんはヌメリン草のぬめぬめが好きなのか、頬ずりしている。プーちゃんが大丈夫なら毒はなさそうだ。


じゃなくって、鑑定結果にビックリした。


『ヌメリン草


 あまり見かけない珍しい植物。レア度3。


 ぬめぬめする草。


 保湿効果がある。


 薬草+山の湧き水+ヌメリン草で保湿に特化した乳液が練成できる。』


どうやらこのヌメリン草を使用することで乳液が作成できるらしい。


これは是非とも採取して、乳液を作成しなければ・・・。


「ヌメリン草は乳液の材料になるわ。うふふ。これも採取しなければ。」


『ならぬっ!!』


ヌメリン草を採取しようとしたら、何故かプーちゃんに止められてしまった。


 


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