第31話
家の増築もお願いしてひと段落がついたので、もう一度マリアに念話をしてみた。
でも、やっぱりマリアと念話ができない。
昨日、一緒に増築をお願いしに大工さんのところに行こうと言っていたのにマリアからの連絡はなかった。
それに今日も連絡がとれない。
やっぱりなんか事故か事件に巻き込まれたのだろうか。
もう一度、マリアの家に行ってみようかと、家を出る。
今度は、マーニャもついてくるとは言わなかった。
どうやら大工さんの家との往復で疲れてしまったようだ。
お水をガブガブと飲んで、今はベッドの上で手足を投げ出して寝ている。
仕方ないから、一人でマリアの家に向かうことにした。
が、やはりマリアの家は留守らしく誰も出てきてはくれなかった。
「どこいったんだろう。マリア・・・」
こういう時はどこに情報が集まるかを考えてみる。
やはり、なにかあれば村長さんがとりまとめるだろうから、村長さんのところに行けば情報があるだろうか。
もしくは、食事処を提供しているダンさんのところだろうか。
ぶるぶると頭を横に振る。
まだ、なにかあったと決めつけるわけにはいかないが、でも、連絡が取れないことは確かなのだ。
私が騒ぐことで大事になるかもしれないけれども・・・。
急ぎ、村長さんの家に向かう。
「あら。マユさん、どうしたの?」
ユキさんがおっとりとした口調で問いかけてきた。ユキさんは村長さんの家の前の花壇にちょうど水をあげていたようだ。
「マリアの姿が昨日から見えなくって・・・。念話も繋がらないんです」
「あらあら。マリアったら何も言わずに行ってしまったのね」
「え?知っているんですか?」
ユキさんはどうやらマリアの行方を知っているようだ。
困ったように、ユキさんは笑っていた。
「パールバティーが連れていったわ。まあ、急だったから連絡する暇がなかったのかもしれないわね。」
「ええ!?もしかして、優花さんと裕太が女王様に連れていかれた時ですか!?」
「そうよ」
ユキさんに言われて、その日のことを思い出す。
優花さんも裕太も私がトマトを採りに行っている最中に女王様が連れていかれた。その時に、マリアも一緒に連れていかれた?
もしかして、女王様が突然トマトを欲したのは、マリアを私から引き剥がすため・・・?
いったい女王様は何を考えているのだろうか。
「あの!念話が通じないのはどうしてですか?」
「マユさん。人に聞いてばかりではなく、自分で考えることも時には必要よ?」
ユキさんは笑いながらも、そう諭してくる。
確かに、人に聞いてばかりでは、成長しない。時には自分で考えることも必要だ。
ユキさんも意地悪で教えてくれないわけではないだろう。
きっと、マリアは無事でいるのだ。だから、あえて私に考えるように言ったのだろう。
「これだけは教えてください。マリアは無事だと思っていいんですよね?」
「ええ。無事よ。まあ、ちょっとパールバティーにこき使われているかもしれないけれど。身の安全は保証するわ。それに、かならずマリアは帰ってくるから安心して待っていなさい。」
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