第29話
「今日こそは、大工さんに増築をお願いしにいくぞー!」
昨日はいろいろあって、大工さんのところに行くことができなかった。
今日こそは大工さんのところに行って家の増築をお願いしてこなければならない。
だって、家が狭くて炬燵が使えないんだもの。死活問題である。
炬燵のためにも早く増築をお願いしに行かなくては・・・。
と思って、さっきからマリアに念話しているんだけれども、マリアからの反応がない。
いったい、どうしたものか。
どうせ、大工さんのところに行くにはマリアの家の前を通ることになるから、マリアの家に寄ってみようかな。
「マーニャ、クーニャ、ボーニャ、マリアの家によってから大工さんのところに増築をお願いしに行くけど一緒に行く?」
置いていくとダダをコネかなないので、念のため声をかけてみる。
もし、マーニャたちが一緒に行くのであれば、マーニャたちを運ぶ為のバスケットも用意しなければ。
『行くのー!』
『家にいるのー。』
『寝てるのー。』
おっと。マーニャ以外は家にいるらしい。
「じゃあ、マーニャ一緒に行こうか。バスケットに入って?」
マーニャの前にバスケットを持って行き、入るように促すが、マーニャはピョイッと飛んでバスケットに入るのを嫌がった。
『やだ。歩いていくのー。』
いやいやーと、マーニャを抱き上げたら身体を突っぱねる。
今日は歩いていきたい気分のようだ。
しょうがない。マーニャだけだし、一緒に歩いていくか。
「じゃあ、バスケットは持っていくからね。途中で疲れたらバスケットの中に入ってね。」
『やだー。今日はマユと一緒に歩くのー。疲れないもん。』
「わかった。わかった。」
マーニャがいやいやと爪をたててポンポンと軽い猫パンチを繰り出してくる。
駄々っ子さんだ。
クーニャとボーニャはもう既に知らん振りをしている。ボーニャにいたってはベッドの上で丸まって眠ってしまった。
クーニャは、お外にかけだしていった。
どうやら遊びにでかけるようだ。
『一緒に歩くの!』
「はいはい。」
マーニャはそう言って、私の前を優雅に歩き出した。
私はその後をゆっくり追う。
時々ダーッとマーニャがかけ、ちょこんと座り込むと後ろを振り向いて私が来るのを待っている姿がなんとも可愛い。
まるでその姿は早く来いといっているようだ。
かと思えば、私の足にまとわりつくように歩くこともあるので、危うくマーニャを蹴り飛ばしそうになる。
ちょうちょが飛んでいればちょうちょに気を取られて道を外すし、なかなかマリアの家まで辿り着けない。
今も目の前をヒラヒラとモンシロチョウが飛んでいたのでそれを追い掛け回している。
しばらく追いかけていたが、逃げられてしまったのか、トボトボと歩いて帰って来た。
『逃げちゃったのー。』
「残念だったね。」
マーニャの頭を撫で撫でとなでると、マーニャはちょうちょが逃げてしまったことを忘れたかのように、ゴロゴロと喉を鳴らしてもっと撫でてとばかりに、手のひらに頭を摺り寄せてきた。
なんて可愛いんだろう。
そんなことを繰り返しながら、いつもの倍の時間をかけて、マリアの家に辿り着いた。
マリアいるかなー。
「マリアー!おはよう!!」
玄関のドアをトントンと叩いて声を張り上げる。
マリアの家にはインターホンが設置されていないので、こうするしかないのだ。
「マリアー?」
トントントン。
シーン。
「あれ?マリアいない?」
しばらくマリアの家の前でマリアを呼んでみたが出てくる気配がなかった。
他の人が出てくる気配もない。
「マリアって一人暮らしだったっけ?」
まだ朝も早い時間である。
家に誰もいないことが信じられない時間だ。
どうしたんだろうか。
『マリアいないのー?』
「うん。出てこないね。」
『ふーん。』
マーニャも心配しているようで、しきりに辺りを伺っていた。
しかし、誰もいる気配がしない。
どこかに出かけたのかな。
でも、念話も通じないから何かに巻き込まれたのではないかと心配になってしまう。
まあ、マリアって年齢の割りにしっかりとしているから大丈夫だろうけど。
「先に大工さんのところに行っちゃおうっか。」
『うん!』
私たちは一旦マリアの家を離れて、大工さんの家に向かった。
といっても、大工さんの顔をまだ見たことがないんだけどね。そう言えば名前もまだ知らない。
「こんにちはー。」
大工さんの家にもインターホンがなかったので、ドアをノックして声をかける。
するとガチャリとすぐにドアが開いて毛むくじゃらの大男が姿を現した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます