第2話

ふわふわ黄色い毛玉もといヒヨコを見つめていると、ヒヨコたちが「ピィピィ」とそれぞれ競い会うように鳴き出した。

何かを私にうったえているみたいなんだけどなぁ。

生憎ヒヨコの言葉はわからないんだよね。

マリアがいればわかるのにな。

そう思っていると、


「お帰り、マユ。」


タイミングよくマリアが訪ねてきてくれた。

でも、マリアはどこか怒っているようで、いつもの笑顔がなく仏頂面である。


「ただいま。挨拶に伺うのが遅くなっちゃってごめんね。お土産もあるのよ。」


「気にしていないわ。」


「マリア・・・なにか怒ってる?」


気にしていないとは言っているけど、いつもの笑顔がないんだもの。とても気になる。

思わず直球で聞いてしまった。


「マユ、よく聞いてくれたわ。話たくて話したくて仕方なかったのよ。聞いてくれる?」


「え、うん。もちろん。」


何があったんだろう。

マリアから黒いオーラが上がっているような気がした。


「ザックさんがマユの作った化粧水を落札したと言っていたわよね?」


「う、うん。言ったわね。それがどうかしたの?」


ああ。ザックさん、もしかしてマリアにまた高価なお土産渡しちゃったのかなぁ。

ここで化粧水の話題が出るってことは、あの高額化粧水をプレゼントしようとしたのか。


「あろうことか、ザックさんが落札した化粧水3本!私にプレゼントって渡してきたのよ!!あれ、いくらで落札したと思うの!!とても、私がもらえるような額じゃないわよ。本当に、加減ってものを知らないんだから。これだからお金持ちは嫌いなのよ。」


「あははは。まあ、まあ。ザックさんはマリアに喜んでもらおうと思ったんじゃない?」


「私には不要よ。だって、動物たちと意思の疎通ができるんだから、猫耳に尻尾なんて不要なのよ。それを私に飲ませようとするんだから・・・ほんとに。もう、思い出しただけでも腹が立ってきたわ。」


よりによって3本すべてマリアにプレゼントしたのか、ザックさん。

本当に加減ってものを知らないなぁ。

付き合ってもいない人から、そんな高額なプレゼント貰えるわけないのに。

それに、いきなりそんな高額なプレゼントを渡してもお金持ちアピールにしか思えないし。

なによりも、付き合ってもいない女の子に猫耳と尻尾が生える化粧水をプレゼントするってどういうことなのだろうか。

ザックさんには男と間違えられていたし、マリアの気持ちもわかるから、ザックさんごめんなさい。

マリアのフォローはしないでおきます。

自分で蒔いた種なので、自分でなんとかしてもらいましょう。

ええ、ええ。決して、男だと思われていたことを根に持っているわけではないです。


「そうだね。そう思うよ。それより、マリア。このヒヨコたち何を言っているかわかる?」


マリアの怒りももっともだと思うけれど、ここで永遠と愚痴っていたりしても仕方がないので、話題を変えてみる。

私は、5匹のかわいいヒヨコたちを指してマリアに聞いてみた。


「ピィピィ、ピョ。」


「まあ。そうなの。わかったわ。マユに伝えておくわ。」


「ピィ!」


流石はマリアだ。ヒヨコとも会話が成立したようだ。なんて言っていたのだろうか。


「マユ、この子たちは精霊のためのヒヨコなんだって。もうすぐ精霊の卵が5つ孵るらしいから、孵ったらこの子たちにそれぞれ乗る練習をさせてってさ。」


「え?ヒヨコに乗るの?精霊が?」


ヒヨコに乗るってどういうことなんだろうか。精霊ってそんなに小さいの?

黄色いヒヨコに乗る・・・。黄色いヒヨコ?黄色い鳥に乗る?

あ、もしかしてヒヨコに乗っている間は敵とエンカウントしないとか?二倍速で移動できるとか?

って、敵なんているわけないか。この世界平和っぽいし。


「うん、まあ。わかったようなわからないような気はするけど、精霊が孵ったら精霊に伝えてみるよ。」


「そうね。で?なんで一気にこんなにヒヨコが増えてるの?」


「えっ!?マリアが孵化機で孵化させてくれていたんじゃないの!?」


マリアはヒヨコが沢山増えていたことを疑問に思って訪ねてきた。でも、私はその理由を知らない。

そもそも、マリアが孵化をさせてくれていたと思ったんだもの。


「私じゃないわよ。卵は回収していないからそのままのはずなんだけど・・・。」


マリアも不思議そうに首を傾げている。そうだよね、普通だったらこんな短期間で卵からヒヨコが孵るわけがないし。


「あ、もしかして・・・。プーちゃんの涙っ!?」


マリアじゃないとすると・・・って考えると一番怪しいのがプーちゃんの涙だ。

この畑兼庭でしこたま泣いていたからなぁ。プーちゃん。

プーちゃんの涙で育ったトマトの効果もおかしくなっていたし、プーちゃんの涙で育った草を食べていた鶏に変化がおきてもおかしくはない。


「ああ、あり得るかもしれないわ・・・。」


マリアも私の意見に同意してくれた。

プーちゃん。もう、泣かないでください。プーちゃんの涙のおかげで私の家の庭が普通からかけ離れていくんだけど・・・。

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