第111話
「ええっと、ちょっと部屋着なので着替えてきます。あと、プーちゃんが部屋にいるので、プーちゃんにマコトさんのところに行くってこと伝えてきますね。」
別に予定がないからマコトさんのところにこのまま行ってもいいんだけれども、プーちゃんにやっぱり一言告げるべきだろう。
また、部屋着のまま食堂に来てしまっているので、マコトさんの家に行くのであれば着替えてから行くのが常識だろう。
「そうでしたか。この時間だと裏門しか空いていませんので、マユさんの準備が整うまでここで待っていますね。」
「わかりました。すぐに行ってきますね。マーニャたちはどうする?マコトさんとここで待っている?」
マコトさんは食堂で私の準備が整うまで待っていてくれるという。
確かにまだ6時前である。
マコトさんの工房が開いている時間ではないので、裏から入るしかないのだろう。
裏から入るとしたらマコトさんがいないと場所がわからないし。
マコトさんの好意に甘えて食堂で待っててもらうことにした。
マーニャたちは、それぞれマコトさんの膝に乗ったり、足にスリスリしている。
『ここで待ってるのー。』
『早く来てねー。』
『いってらっしゃーいなのー!』
どうやら、マーニャたちは一度部屋に戻るということはしないようである。
そうだよね。久々にマコトさんに会えたんだものね。
次はいつ会えるかわからないから、離れがたいよね。
少し寂しいと感じながらも宿の部屋に一人で戻ることにした。
部屋に戻るとプーちゃんはベッドの上でとぐろを巻いて眠っていた。
私が部屋着から普段着に着替え終わってもプーちゃんは起きる気配がない。
熟睡しているようなので、起こすのも忍びないと思いマコトさんのところに行くから宿で待っていてほしいとメモを残していくことにする。
って、プーちゃん文字読めるんだっけ?
今までプーちゃんが文字を読んでた記憶がないんだけど・・・。
って、いざとなったら念話があるからいっか。と、軽い気持ちでメモを残して部屋を後にした。
だから私は気がつかなかった。私が部屋を出た後、プーちゃんが苦し気に呻いていたことに。
「お待たせしましたっ!プーちゃん熟睡していたので、メモ残してきました。」
『マユ!やっと来たのー。』
『遅いのー。』
『待ってたのー。』
「では、行きましょうか。」
食堂に着くと、マーニャ、クーニャ、ボーニャがマコトさんの膝や肩から降りて、私の元へ一目散にかけてきた。
そうして、私の足に頭をこすりながらニャーニャー可愛く鳴いてくる。マーニャたちの頭を順番に撫で、バスケットの蓋をあける。
「マコトさんの家に行くからバスケットの中に入ろっか。」
『『『にゃあ♪』』』
マーニャたちはバスケットの中にそれぞれ自分から入っていった。
相変わらずお利口さんの猫たちである。
ちなみにマーニャたちが入ったバスケットは「僕が持ちますね。」と言ってマコトさんが持ってくれた。
宿の目の前がマコトさんの工房なので、すぐに着いた。
裏口は少し入り込んだ小路を入らなければならないので、マコトさんがいなければ裏口にはたどり着けそうになかった。
とても、口で説明してもらっても迷子になりそうなくらいに入り込んでいる。
「さあ、あがってください。」
マコトさんはそう言って、裏口のドアを開けて私たちを招いてくれた。
『『にゃあ~。』』
「あ、可愛い猫ちゃん。」
マコトさんの家にあがると、尻尾の長い黒猫と、黒猫よりも一回り大きな白猫が優雅に迎えにでてきてくれた。
『『『ままー!』』』
バスケットの中から弾んだ声が聞こえてくる。それを聴いてマコトさんがバスケットの蓋を開けると、マーニャたちが飛び出し黒猫の元に駆け寄っていった。
そうして、代わる代わる黒猫と鼻でちゅーをしあっている。黒猫は時々マーニャたちの頬や額を優しくグルーミングしている。
どうやら、この黒猫さんがマーニャたちのお母さんのようである。
「この黒猫がマーニャたちのお母さんでクロと言います。こっちの白猫がマーニャたちのお父さんでシロと言います。」
マコトさんがそうやって説明してくれた。って、ネーミングセンス!!
誰が名前をつけたのか見た目通りの安直な名前である。
思わずマコトさんをじっと見つめていると、マコトさんが頬をかきながら苦笑した。
「ユキが命名したんですよ。安直でしょう?」
「いえ、あはははは・・・。」
どうやらユキさんが名付けの親らしい。マーニャたちはお母さんと会えたのが嬉しいのか、クロちゃんの側から離れる様子がない。クロちゃんもマーニャたちに会えて嬉しいようで、マーニャたちを舐め回している。
それを見ているシロくんは少し寂しそうだ。4匹から少し離れた位置でじっと4匹のことを眺めていた。
「マーニャたちはしばらくあの状態だと思いますからこちらにどうぞ。ゆっくり話もしてみたいですし。」
「お邪魔します・・・。」
私はマコトさんに続いて障子を開けて部屋の中に入った。部屋の中は純和風になっていた。そして、部屋の中にはこじんまりとした炬燵が置かれていた。
「あ、炬燵だぁ・・・。」
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