第86話

 


猫と一緒に止まる部屋だからか、部屋の片隅にはところ狭しと猫用のおもちゃが置かれていた。


オーソドックスな猫じゃらしから、穴がポコポコ開いたダンボールや、何に使うのかわからない人形まで様々なおもちゃが用意されている。


これ、どれでも好きに使用していいそうだ。


ちなみに、どれも消毒済みなので猫に使用しても安心・安全である。


どれを使用しようかな・・・。


ここはまず、オーソドックスに猫じゃらしかな?


真っ白いふわふわな毛が先端についた猫じゃらしを手に取る。


 


「ほら~猫じゃらしだよ~。」


 


マーニャの前でゆらゆら揺らしてみるが、チラリとこちらを見るだけで反応が薄い。


 


「………………。」


 


マーニャが釣れない。


ゆらゆらゆらゆら。


猫じゃらしだけが遊んで欲しそうに揺れているが、マーニャは何処吹く風だ。


猫じゃらしって動かしていれば猫が寄ってくるんじゃなかったっけ?


気を取り直して、手のひらサイズのネズミの人形を手に取ってみる。


こちらもふわふわな真っ白い毛で覆われている。


さわり心地がとても良い。


これを、ボーニャの前に置いてみるが、反応がない。


チラリとネズミの人形を見たが、毛づくろいを初めてしまった。


 


「………………。」


 


仕方ない。


まだまだおもちゃはいろいろあるから別のおもちゃにしてみよう。


今度は魚の形をしたぬいぐるみ?を手にとってみる。


ぎゅっと握ると「カサッ」と音がする。


クーニャに向かって魚の形をしたぬいぐるみをふりふりしてみる。


が、やはり反応がいまいちだ。


魚のぬいぐるみをチラリと見るのだが、そのままベッドの上で丸くなって寝てしまった。


 


「………………。」


 


いったい、何のおもちゃで遊べばいいのだろうか。


途方にくれたところで、ピンポン玉くらいの穴が沢山開いたダンボールが目に入った。


はて?これはどうやって遊ぶおもちゃなのだろうか。


うーん。


ただ、ダンボールを見せるだけだと意味がないだろうし。


そこで、一番最初に手に取った猫じゃらしが目に入った。


ちょうど、ダンボールの沢山空いた穴から猫じゃらしが顔を出すことができる。


クーニャの前にダンボールと猫じゃらしを持っていって早速ダンボールの穴から猫じゃらしをひょこっと少しだけ出してみた。


すると、クーニャの目が猫じゃらしに釘付けになった。


これはいけるかもしれないっ!


私は猫じゃらしをひょっこりと出す穴を変えてみたりしてクーニャを誘う。


もぐらたたきのような遊び方だ。


クーニャはしばらく目だけで猫じゃらしを追っていたが、寝ていた体勢から起き上がった。


そうして、猫じゃらしからは目を離さずに、お尻を高く上げてお尻を左右に振り出した。


もちろん、尻尾はピーンッと張っている。


穴から猫じゃらしを出したり引っ込めたりしていると、クーニャの目がキラリと光った。


 


ペシッ!!


 


ついに、クーニャが猫じゃらしにじゃれついた!


やった!やったよ!


一回じゃれつくと癖になるのか、穴から出す位置を予測してペシペシと右手で叩き始めた。


もぐら叩きならぬ猫じゃらし叩きだ。


しばらく楽しそうにクーニャが遊んでいたが、10分も経つと疲れたのか猫じゃらしから目を背けてしまった。


 


「クーニャ、楽しかった?」


 


『楽しかったけど、疲れたから少し休むのー。』


 


やはり集中していただけに疲れたようだ。


今度は、マーニャと遊ぼうかな。


お魚のぬいぐるみで遊んでみたいんだけど、どうしたらいいんだろう。


と思って、おもちゃが置いてあったところをみると、なんとマタタビが置かれていた。


そこには「少量だけおもちゃにつけて遊んでください」と書かれている。


マタタビを一掴みとると、魚のぬいぐるみに振りかけてみた。


そうして、マーニャの傍に持っていくと、ボーっと窓から外を眺めていたマーニャが勢いよく振り向いた。


そして、クンクンとあちこち匂いを嗅いでいる。


 


「これ?」


 


マーニャの前にマタタビを振りかけた魚のぬいぐるみを差し出す。


すると、「にゃあ♪」と鳴きながら魚のぬいぐるみに頭をこすり付けてきた。


何度か頭をこすり付けた後、おもむろに魚のぬいぐるみに噛み付いた。


両手両足で魚のぬいぐるみをホールドすると勢いよく両足で魚のぬいぐるみを蹴り始めた。


ちょうど猫がホールドするサイズに丁度いい魚のぬいぐるみである。


きっとこの遊び方が適切なんだろう。


だけれども、なんかマーニャが一匹で遊んでいるだけで、私は蚊帳の外だ。


マーニャが楽しそうなのはいいけど、ちょっと寂しい。


今度はボーニャと遊ぼう。


手のひらサイズのネズミのぬいぐるみを手に取る。


先ほど、クーニャはダンボールの穴からひょこひょこ顔を出す猫じゃらしに夢中だった。


獲物が見え隠れするのがいいのかもしれない。


そう考え、ネズミのぬいぐるみと、近くにあった少し厚めの生地の布を手に取る。


この布もおもちゃとして用意されていた。


 


「ボーニャおいで・・・。」


 


私はその布の下に手をいれて、ネズミのぬいぐるみを布から出したり引っ込めたりする。


すると、ボーニャが毛づくろいをやめてこちらを見た。


先ほどとは違い少し見ただけでまた毛づくろいを始めるのではなく、何時でもネズミのぬいぐるみに飛びかかれるような体勢をする。


どうやらボーニャはネズミのぬいぐるみが気になるようだ。


不規則に布からネズミのぬいぐるみを出し入れすると、狙いをつけて飛び掛ってきた。


そうして、ネズミのぬいぐるみを両手でパシッと捕まえると、高く放り投げる。


落ちてきたネズミのぬいぐるみをまた両手で捕まえると、また高く放り投げる。


捕まえては放り投げ。放り投げては捕まえるの繰り返しだ。


マーニャと同じくボーニャもまた一匹だけで遊び始めてしまった。


 


ま、いっか。


マーニャもクーニャもボーニャも楽しそうだし。


それより、そろそろ化粧水ができたかな?


いそいそと錬金釜の元へと向かう。


蓋を開けようと手を蓋にかけると、


 


『『『プーちゃんっ!!』』』


 


マーニャ達の声が響いた。


 


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