第76話
人型になったマーニャ、クーニャ、ボーニャと一緒に泉を後にする。
右手はクーニャと繋ぎ、左手はボーニャと繋いでいる。
マーニャは元気よく私の前を歩いていた。
獣人の街の出口に向かって歩いていると、ふとマーニャがピタリと足を止めた。
必然的にマーニャの後ろを歩いていた私たちの足も止まる。
「どうしたの?マーニャ?」
「良い匂いがするのっ!!」
「えっ?」
止める間もなく、マーニャはいきなり駆け出した。
慌てて追おうとするが、右手をクーニャに、左手をボーニャに取られているので反応が遅れた。
「マーニャ!ちょっと待って!」
「マーニャ何処行くのー?」
「にゃっ!あっちから美味しそうな匂いなのー!!マユ!早く早く!」
「えっ!?」
「にゃ?」
ボーニャはのんびりとマーニャを見送っていたが、クーニャもマーニャと同じように良い匂いを嗅ぎつけたようだ。
マーニャが走っていった方に向かって走り出す。私の手を握って。
必然的に私も走ることになり、私の手を離さないボーニャも一緒になって走り出すことになった。
「ちょっ・・・クーニャ、たんま」
「にゃぁ・・・」
クーニャ意外に体力があるなぁ。
猫って瞬発力はあっても持続力がないんじゃなかったっけ・・・?
ボーニャはへたっているし、クーニャが特別?
というか、クーニャとマーニャがおかしいのだろうか。
同じ猫でも固体によって能力って違うんだなぁ。って思ったところでハッとした。
猫に限らず人や馬も固体によって能力がそれぞれ違う。
足が速い固体もいれば、足が遅い固体もいる。
人間と馬では馬の方が速く走れる。
では、馬と竜とではどちらが早いだろうか。
なんとなく竜な気がする。
ということは、もしかしてもしかすると、ザックさんの言う王都まで三日の距離とプーちゃんの言う三日の距離が違っているのではないだろうか。
きっとザックさんの三日というのは馬車で三日で、プーちゃんの三日というのはプーちゃんが空を飛んで行ったときの三日だと思われる。
馬車とプーちゃんの移動速度にどのくらいの違いがあるかわからないけれども。
まあ、このくらいもうザックさんが思いついているかもしれないけれど。
「マユ!これ買うの!」
「クーニャはこれ!」
「ボーニャは両方!!」
「えっ?」
ついつい考え込んでしまっていたら、ずずいっとマーニャたちに囲まれた。
マーニャは片手に焼き魚を持っている。
クーニャは私と手を繋いでいるから手に何も持っていないが、屋台を指指している。
どうやら鳥の串焼きを売っているようだ。
ボーニャも私と手を繋いでいるけれど、マーニャの持っている焼き魚とクーニャが指差した鳥の串焼きを交互に指して買ってほしいと訴えている。
それらはとても美味しそうな匂いを発していて、私の食欲も刺激される。
ぐ、ぐぅ~~~。
おっと、いけない。
思わずお腹が鳴ってしまった。
そう言えばもうすぐお昼だしなぁ。
最初は王都でお昼と思っていたけれど、馬車と竜の距離の違いというのも検証しなければならないしすぐに王都ってわけにもいかないだろう。
そうするとここでお昼を食べるということが最善だろうなぁ。
「わかった。わかった。順番に並んで買おうね。って、マーニャ!その焼き魚お金払ってないよね!?持ってきて大丈夫なの?」
「だいじょーぶ。マユが買うんだから!」
そう言って、お金も払っていないのにマーニャは焼き魚にかぶりついた。
どうやら待てなかったようである。
私は慌てて鳥の焼き魚を売っている屋台に向かい、お詫びとともに串焼きを10本買った。
「すみません。マーニャが勝手に商品を取ったみたいで」
「ちゃんと金さえ払ってくれればいいよ。気にすんな」
優しいおじさんでよかった。
でも、耳からすると狼の獣人さんだよね?
次にクーニャが指差した鳥の串焼きの屋台に向かう。
ここでも同じように串焼きを10本購入する。
「ちょーだい!マユ!早くぅ!!」
串焼きを受け取るとクーニャが早速強請ってきた。
「はいはい」
クーニャに串焼きを渡すとクーニャもその場で串焼きにかぶりついた。
「にゃあ~。美味しいにゃあ~」
「ははは。喜んでもらえて嬉しいよ。ありがとう」
串焼きを売っているおばちゃんが豪快に笑って、おまけだよって串焼きを3本追加してくれた。
こっちのおばちゃんは耳を見る限り狐のような気がするなぁ。
食料を両手に持っているから今度はクーニャともボーニャとも手がつなげない。
まあ、ボーニャは右手に串焼き、左手に焼き魚を持って交互にかぶりついているから手を握る暇なんてないけれど。
しっかし、今日はだいぶ出費したかも。
宿での会計を思い出してがっくりと項垂れる。
意外と高かったんだよ。宿代。
一人一泊5万ニャールドだったんだよ。
まあ、ザックさんの分はザックさんが自分で払ったからいいんだけどね。
私、5人分払ったんだよ。マーニャとクーニャとボーニャと私となぜかプーちゃんの分!
まあ、マーニャ達の作ってくれた化粧水のお金でなんとか払えたんだけどね。
できれば宿は一泊1万ニャールドくらいで済ませたかったなぁ~。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます