第48話


「にゃうにゃう~。にゃうにゃう。」

と嬉しそうにマーニャが鳴いて、ユキさんの足に顔を擦り付けている。


「ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ………。」

と幸せそうにクーニャが喉を鳴らして、ユキさんの腕の中で寛いでいる。


「にゃぁ~ん。」

と、ボーニャはウキウキとしているように、ユキさんの周りをまわっている。


マーニャもクーニャもボーニャも、ユキさんに化粧水が渡ったことがお気に召す結果だったらしい。

もしかして、マーニャたちはプーちゃんが化粧水に魔力を込めたらユキさんが求める効果を持つ化粧水が出来上がるということを知っていたのではないだろうか。

思わずそう勘ぐってしまう。

ただの偶然かもしれないけど。


「200万ニャールドかぁ…。」


王都に行けばマコトさんに会える。

マコトさんに会えれば日本に帰るためのヒントが得られるかもしれない。

でも………。


チラッとユキさんにまとわりついているマーニャたちを見る。

日本に帰るってことは、この子たちともお別れをしなければならないわけで。

まあ、必ずしも日本に帰れると決まったわけではないのだけれども。

もし、日本に帰れるとハッキリわかってしまったら私はどうすればいいんだろう。


茫然とステータス画面の所持金を眺める。

眺めても何も変わらないけれど。


「マユ!マコトさんに会えればもしかしたら、迷い人同志ってことで炬燵を安く売ってくれるかもしれないよ!」


「あっ!そっか!」


そうだった!

日本に帰れるのかもしれないけど、それより炬燵を作って貰えるかもしれない可能性もある。

炬燵、炬燵欲しいなぁ。


「マユの世界に帰れるかもしれないけどさ、今すぐ帰らなきゃいけないわけでもないんでしょ?迷ってるのもわかるけど、まずはマコトさんに会ってみようよ。マユの悩みも吹き飛ぶかもよ?」


「そう………だね。」


10歳以上年下のマリアに励まされてしまった。


「あ、あの………。マコトに会ったら………伝えて欲しいことがあるの。」


ん?

突然ユキさんが会話に割り込んできた。

そう言えばユキさんはマコトさんにこの村で会ったことがあるのか。

ユキさんの見た目からだと想像できないけれど。


「伝えて欲しいこと?」


「ええ。ダメかしら?」


「いいえ。なんですか?」


「マコトに私は幸せだって伝えて。マユさんのお陰で夢が叶いそうって伝えて。」


マコトさんはユキさんの夢も知っているのか。

ユキさんとマコトさんは思った以上に仲が良かったようである。

元恋人とかって言わないよね??


「わかったわ。マコトさんに会えたら必ず伝えますね。」


「ありがとう。よろしくね。」


ユキさんはとても幸せそうだ。

幸せそうに微笑んでいる。

こんなに幸せそうなんだから、伝えないわけにもいかないだろう。


「私、王都に行くわ!」


「うん。いってらっしゃい。」


「えっ?」


「え?」


王都に行く決意をしたら、マリアにアッサリと「いってらっしゃい。」とにこやかに言われてしまった。


「マリアは行かないの?」


てっきりマリアはついてきてくれると思っていたのに違うのだろうか。


「ごめんね。マユ。私、スキルのせいで人の多いところは苦手なの。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る