69話 羨ましい……
「真尋ぉ……」
「どうしたの?」
「羨ましい……雫が羨ましい……」
「あぁ……」
まぁ……確かにすごく仲良さそうだものね。唯は本当に葵の事が大好きだから嫉妬なのでしょう。もうこういう感情隠すのやめたわねこの子……。まぁ葵が鈍感すぎるから仕方ないのかもしれないけど。
……いや、葵は鈍感とかそう言うのじゃなくて自分の気持ちを確立させてから……という気持ちがあるのかしら。
「なら加われば良いじゃない。一緒に勉強出来るわよ?」
「私が行ったところで『何しに来たんだ?』ってなるじゃないか。範囲は全部理解しているしね」
「別に教わりに行く必要なんてないわ。要は葵の近くにいたいのでしょう?それなら……」
「……ふむ。良いねそれ。じゃあ行こうか!ほら真尋も!」
「え!?いや、私は……」
☆☆☆
騒がしいなぁ……何話してんだあいつら。
在原さんはワークを解き始めて、月城さんは教科書とノートを見て頭を悩ませている。林は……寝てるなこれ。うーん……大丈夫なのかなこれ。
ちらりと唯達の方を見る。……が、既に席にはいなく、こちらに向かって来ていた。え?何怖い。
「やぁ葵。勉強は捗っているかい?」
「いや全く」
「そ、その……唯に連れられただけよ」
何があった真尋!いつもの真尋じゃないぞ!?いつもの真尋は何かしら小言を言ってくるイメージがある。いや毎回じゃないけどね?けどまぁこういう真尋には違和感を感じる。
と言うかいつもの小言を言う真尋を求めるあたり自分が中々の変態なのではないか?と思ってしまった。いやそういう趣味は無いんだが……。
まぁあれだ。らしくない真尋に動揺しただけだ。もしかしたら真尋は非常にピュアでなおかつシャイな性格なのかもしれない。3年ちょっとじゃ分からないことがあるだろう。
「で、何しに来たんだ?」
「いやいや大変そうだなぁと思ったから来ただけさ。何かしてあげようか?なんでも……は無理だから、限りはあるけど叶えてあげようじゃないか」
「マジで?じゃあ在原さん、月城さん、林に勉強教えといて」
「え?いや、そう言うのじゃない……何か無いのかい?なでなでとか……」
何度も言うけど教室ではやめてね?今の発言でも俺に対しての視線がすごいことになってるから。視線めちゃくちゃ集まってる。わーい人気者だー。まぁその視線は殺意と憎悪にまみれているのだが。もう本当に怖いよ。
「頼む。教えてやってくれ。さすがに俺1人じゃ手に負えん」
「む……皐月。それどういうことなの」
「在原さんも苦手な教科ははっきりしてるだろ?俺だけで全員分の苦手教科を見るのは無理があるってだけだ。バカにしてるわけじゃない」
「それならおっけー……」
「ふっ……我に教えなど必要ない……本気を出せば全教科満点など容易い……」
……まぁ余裕は無いんだけどな。月城さんは俺が教えるか。月城さん数学が苦手だし。
林は真尋が頑張って起こしてくれるだろう。
「むぅ……私は葵とおしゃべりしたくて来たんだがね……まぁいいや」
話が早くて助かる。唯はすぐに在原さんの方へと教えに行った。
さて……あとは林だな。爆睡してるけど起きるかなこれ。
「林、自習時間だから起きようぜ?ほら、テストも近いしさ」
背中をポンっと叩いて起こす。すると眠そうに目を擦りながらこちらを向いて口を開いた。
「
「ん?今何て言った?」
と尋ねたが、また林は眠りについた。困惑しているが、多分……寝かせてくれ的な事を言ったのか?何1つとして理解は出来なかった。
「林、起きて。勉強するの」
「はぁ……?眠いんだが……」
と言いつつ伸びをして後ろを向いてくれたので起きてはくれるのだろう。……なんか俺の時すげえ流暢な台湾語で返されたんだが?
「ふぁ……眠い。で、なんだよ在原」
「林も勉強するの。みんなでやればきっと楽しい」
「みんなねぇ……で、それお前もやんの?」
「もち!」
「ふーん……」
少し考えてから教科書などを出す。すぐそこにいる真尋に気付いたのだろう。ぺこりとお辞儀をして教えを乞う。高身長故にいつも高い位置にある頭がこうやって低い位置にあるのは珍しい。
さて、じゃあ勉強するか。
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