46話 短い集中力

「ふぁ……」


飽きてきたし眠くなってきた。勉強はしなければいけないからしているが、好きじゃないし。むしろ嫌いだ。

時計を見ると2時間が経っていたので、飽きが生じるのは仕方がない。うん、仕方ないことなんだこれは。

まぁおかげで2教科ならテスト範囲を全て理解したので、別にもう良いだろう。予習復習をしっかりしているのが幸いだ。


「飽きた」


「真面目にやりなさいよ……。まぁ私も飽きたのだけれどね。ゲームでもする?」


「いや俺のゲーム機なんだが。じゃやるか。何やりたい?」


そこまでバリエーションがあるわけじゃないが、有名所のゲームは結構買ってるので飽きる事はない……と信じたい。


「あ、これやりましょうよ。複数人で対戦とか出来るそうよ!」


「あ、僕もやりたいな」


4人までは出来るのであと1人出来るな。あまり騒ぎすぎなければ大丈夫かな。


「唯と瑠璃は?まぁ1人観戦になるんだけどさ」


「じゃあ私良いですか?あ、唯さんは……」


「気にしないでくれたまえ。私はもう少しだけやるよ。これさえ終われば全教科終わるし」


「え、もう全教科?唯、後で教えてくれ」


「もちろん。聞いてくれれば何でも教えるさ」


めっちゃ頼もしいな。よし、聞きまくろう。そして今回こそ唯に勝とう。

何度も言うが、俺の目標は唯に勝つ事だ。比較的成績の良かった小学生の時(それも中学年)ですら勝てなかったのだ。高学年は……ちょっと思い出したくないなぁ。


「ほら葵。早くキャラ選びなさい。あ、そのキャラ可愛いわね……」


「使った方が良い?」


「……見たい」


「りょーかい。じゃ、やるか」


ちなみにこのゲームはステージ上で大乱闘を繰り広げるゲーム。……なんだこれ画質めっちゃ綺麗だな。唯と遊ぶために買ってはみたものの唯が来ることが少なかったので遊ぶのはこれが初めてだ。父さんが来た時にはレーシングゲームやってたし。

ステージ上で暴れ回るキャラ達。その中で一体だけとてつもない動きをしているキャラがいる。そう、俺である。


「ちょ、葵。それ……あははっ!なんで自滅してるのよっ!」


「うっせ、初めてやるんだよこれ!はーい!ざまぁ!真尋ざまぁぁぁぁぁ!!!!!!」


「きゃあああ!!!ちょっと佐伯君どいてどいて!そこの挙動不審ネズミ葬り去るから!」


「誰が挙動不審ネズミだ!」


ぎゃいぎゃいと騒ぎながらゲームをする。ハッと思い出したが、今唯は勉強中だ。流石に騒ぎすぎただろうか。

丁度ストックが消えたのでそろ〜っと唯の方を見る。唯は勉強を終えたのかぐい〜っと伸びてふぅっと息を吐いた。伸びをした所で俺に気付いたのか、にこっと微笑みかけてくる。

時分もやりたくなったのだろう。とてとてとこちらの方に近付いてきて画面を見る。


「葵は最下位……。ふふっ」


「おい笑うな。俺だって真剣にやってる」


「私もやろっかな。葵、代わってくれたまえ。安心して。仇はとるさ」


そう言った唯にコントローラーを渡す。じゃあ2回戦……と言ったところで唯が口を開いた。


「キャラ……すごい少ないね。全然やってないのかな」


「まぁ全然やってないな。シャケどつき回すのが楽しくてさ」


あの爽快感最高だぞ。イカに向かってやってくる殺意MAXなシャケ共を殺し回るの。しかもそれで報酬も貰えるのだから楽しい。

おかげでガチのランクはそんなに上がってないのにバイトのランクだけカンストしたからな。これがプロアルバイターの力だ。

さてさて。画面に目を向けると唯の無双タイムが始まっていた。さすが本垢で世界戦闘力400万ぐらいまで行ってる奴だ。格が違うなんてもんじゃない。

ふと気になって世界戦闘力ランキングを調べてみる。すると1位は593万。100位ですら583万もあるので唯ですらトップには入れないのか……と思う。もうここじゃ敵無しなんだけどなぁ。

今も3人で畳み掛けたが、ものともせずにノーダメージで切り抜けてるし。もうなんと言うかレベルが違う。それに楽しそうだ。唯だけじゃなくて3人共。ボコボコにされてるが、とても楽しそうにプレイしている。

次は俺もやろうかな。


☆☆☆


「いやー、天音さん強いね。結局1つもストック減らせなかったし……」


「ふふーん。強いだろう?」


えへんっ!と胸を張る唯。ほんと子供っぽいとこあるよなぁ。まぁそこも可愛らしいところではあるのだが。幼馴染補正無しでもめちゃめちゃ可愛いのだから、多分唯以上の可愛い女の子っていないよなぁ……て思う。


「そろそろ飯の準備するか。真尋、手伝って」


「任せなさい。材料は買ってあるから」


冷蔵庫を開けると牛肉やら人参やら玉ねぎ、ジャガイモなどがあった。

ふむ。これならカレーか肉じゃがが作れるな。どちらも得意ってわけじゃないけど。


「カレールーあるからカレーだな。じゃ作るか。真尋の方が料理上手だし、真尋に任せたいんだけどな……」


「あら、別にいいわよ?」


「さすがに冗談だよ。1人に任せるわけにもいかないしな」


1人だと色々やらなくちゃいけなくて大変だし、どうしても時間がかかるしな。足を引っ張ることになるだろうけど何とか頑張ろ。

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