35話 それじゃあせーの……!

「それじゃあせーの……!」


「「「「誕生日おめでとう!!!!」」」」


先程買ってきたクラッカーをパァンと鳴らして拍手が起こる。祝われた唯は、えへへ〜と言ったような笑顔で喜びを前面に出していた。


「ふふっ、ありがとう。私はとても良い友達を持ったね」


こう言った1年に1回しかないイベントって言うのは盛大に祝うべきだろう。実際に両親には盛大に祝ってもらっていたし、唯や真尋もそうだ。


「はいこれプレゼントな。まぁ気に入るかどうか……」


そこの中には2週間前に買った靴やその前に買ったネックレスが入っている。

うちの学園の校則では華美でない物に限りアクセサリーは認められているので校則的に問題ない範囲だ。中等部の教師ではあるが確認も取っているので心配は無い。

唯と遊びに行った時にモールなどに寄ると唯の目がアクセサリー類に向くのは見て来たし、その中でも唯に合いそうな物を選んだ。


「ありがとうね葵。開けて大丈夫?」


「もちろん」


ふんふーん♪と愉快に鼻歌を歌いながらガサガサと袋を開ける唯。こういう時って本当に緊張するな……。

ガサガサという音が鳴り止みネックレスを取り出す唯。一度おぉ……と声を上げた唯の瞳がキラキラと輝き出す。


「綺麗……」


「そりゃ良かった。付けてやろうか?」


「……!うん!付けて付けて!」


引き輪を開けて反対の輪に付ける。うん、サイズも申し分無いだろう。胸元には銀色の装飾が目立っていた。


「似合ってるわよ唯。とっても可愛い」


「ほんと!?えへへ……嬉しいなぁ」


とろん……と言った表現が正しいのか。そんな笑顔を浮かべる唯。喜んでくれて何よりだ。思わずこちらも笑みがこぼれる。


「なんか……葵に全部持ってかれちゃったね。天音さん。すごく嬉しそう」


「けど私達も頑張って探したんだもん!唯さんが喜ぶようなプレゼント!」


大きな袋と小さな袋を取り出す瑠璃。はぁ、と1つ大きく息を吐いてよし!と言った面持ちでその袋を手渡した。


「唯さん、どうぞ」


「瑠璃もありがとね。……かなり大きな袋だね」


「あの……私の中では可愛いと思って選んだので。けど、私ちょっとずれてるってよく言われるんです」


そんな話を聞きながらガサガサと袋をあさり大きなぬいぐるみを取り出す。


「……くじら?」


「はい、くじらです。春休みに水族館に行った時、可愛い!って一目惚れしたんです。それで水族館のホームページを見たら売っていたので……」


もふもふと触り心地を確かめる唯。しばらく触った後にぎゅっと抱き着いた。


「はぁ……可愛い。すっごく嬉しいよ!お部屋片付けてこの子の置き場所作ってあげなきゃ」


ふんす!と言った感じで気合を入れる唯。そして小さい袋も開封する。中から出てきたのはスマホケースだ。手帳型のやつ。


「唯さんスマホケース持ってなかったなって思って買ったんです。よければ付けてください」


華美でもなければシンプルと言った訳でもない。ちょうど中間と言えばいいのか……。バランスが取れたような使いやすいスマホケースとなっている。


「ふふっ、ありがとう。私のスマホって飾り気が無かったから可愛くなるね。早速付けても?」


「ぜひ!」


商品のパッケージからケースを取り出しスマホにはめる唯。わぁーっと楽しそうに付けていて渡した瑠璃はとても嬉しそうに微笑んでいた。


「どう?」


「良いんじゃねえか?唯っぽい」


「はい!とても唯さんらしいです」


「ありがとう。大切にするよ!」


ここまでで俺と瑠璃がプレゼントを渡した。とても喜んでいてくれて嬉しいし、素直な反応をしてくれるので来年もこうして渡してやろうとか思える。

いい意味でも悪い意味でも素直な性格なのだ。気に入らないものははっきり言うし。


「私達……見劣りしないかしら」


「……しそう」


若干不安になる2人がいるが、誕生日パーティーは進んでいく。

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