24話 初戦は勝利で…

「結局1組が18点差で勝利と……ははっ強いなぁ」


第4クォーターは追い上げてたんだけどなぁ。まぁ始めから大差だったから追い上げても……て感じではあったが。


「まぁ他クラスのことはいいじゃん!ボク達が勝てば良いだけだもん!」


「速水さんの言う通りだよー?……まぁ私はあんまり戦力にはなれないんだけどね……その、体力的な面で」


「安心しろ裕喜。プレーの面では最初から期待値0みたいなもんだ」


「茜君!それはひどくない!?」


またこれもいつものように喧嘩に見せかけたいちゃつきが開催されるんだろうなぁ。

もう収拾がつかないので、えーっと……確か速水柚葉はやみゆずはさん……だったかな。……とりあえず話題振らなきゃ。


「速水さんは確かバスケ部だったよな」


「まぁ全然下手なんだけどね。裕喜は体力が無いだけだから……ボクより上手いよ」


「柚葉……嘘はいけない。えーと……皐月?も騙されないで」


「お、おう……てかごめん。名前なんだったっけ」


「……在原雫ありはらしずく


呆れたような表情をする在原さん。だが少しばかり寂しそうな表情も見え隠れしていた。ごめんね。でも君と同じクラスになったの今年が初めてなんだよ。


「雫はね!バスケすごい上手いんだよ!女バスの1年の中なら1.2を争うぐらいかな」


「……(ドヤ顔)」


この人すごい表情に出るな……。ものすごく嬉しそう。

あれ?そう言えばバスケ部ってもう1人いたよな。確か男バスの……


「そうそう。林。あの身長高い人」


「……なんで俺のイメージそれしかないの?」


理由なんて1つしかない。林建有リン・ケンユウと俺は中等部の時に1度も同じクラスにならなかったからだ。中等部の頃から「なんだあのデカイ人……」とは思っていたし名前も聞いたことはあるんだが、話す機会は無かったからなぁ。


「つか林って台湾人?」


「国籍上はな。両親が台湾人だから台湾国籍になってるけど、俺自体は日本生まれの日本育ちだ。台湾語は……話せるけど苦手」


との事らしい。確かに日本語はとても流暢で、台湾人と言わなければ日本人として見られるだろう。


「それより練習はいいのか?雑談ばかりしてるが…もうそろそろ始まるぞ?」


「え?」


時計を見る。タイマーは残り7分を指していた。ラスト2分は作戦決めとかに使うため、実質残り5分である。……なーんか似たような流れを経験したことあるなぁ。


「じゃ、シュートでも打つか。ボールくれ」


「ん」


パスをするとその流れのままシュートを放つ。茜が放ったシュートは綺麗な放物線を描き、スパッと綺麗にネットを通る。それが2本、3本と続いていく。


「茜。調子良いな」


「絶好調絶好調。これなら結構決まりそう」


☆☆☆


スターターは茜、林、速水さん、在原さん、彼方で行くらしい。まぁ事実上最大火力ではあるし、彼方を出来るだけ走らせないようにすれば良いしな。ベンチから試合を見つめることにする。


「初戦は勝利で飾りたいからな。裕喜は出来れば前半はずっと出て欲しいんだけど……」


「任せて!頑張って持たせるから!」


わぁー……スターターでめっちゃ嬉しそうだなぁ。張り切るのは良いが、自分の体力の無さを十分に理解してから張り切って欲しい。多分彼方が思ってる以上に体力無いから。


「彼方さんと仲良いの?」


「別に仲が良いわけじゃないよ。ただ3年も連続で同じクラスになってたら、そこそこ話す機会はあるってだけ」


実際普段は業務連絡程度だしなぁ。特に彼方が茜と付き合い始めてからそうなった。


「まぁ今は別にいいよ。それよりもう始まるぞ」


ジャンプボールは林。学年でも1番高いんじゃないかな?ぐらいの身長を誇るのでまず負けないだろう。相手の方を見ると、林に比べたらかなり低いし。

ボールが上がる。林がボールを弾き、在原さんが持った。ボール運びは彼女に一任するらしく、他の4人は早々に上がっている。

彼方のマークは緩めで茜にダブルチーム。林、速水さん、在原さんに1人ずつ付いている。だが彼方にパスを出そうもんならすぐに対応できる位置には付いている。


「まぁ……彼方と茜が近い位置にいりゃああなるよな……」


バスケはそんなに詳しくないが、どちらにも対応は出来るようなポジションで守っているのだろう。

誰にパスを出すか。4人を見回した後に……


「シュート!?」


なんと在原さんはドリブルでかわす事もせず、誰かにパスを出すわけでもなくその場でシュートを放った。そのシュートは綺麗な弧を描き……ガンッ!


「……あれ、外れた」


「在原……」


林が呆れたようにリバウンドを取る。やはり高さの面では有利に出ているのは林だ。


「むぅ……柚葉!」


リバウンドを取りに行こうとして速水さんのマークが甘くなる。その瞬間を逃さずに素早いパスを送る。そこからのジャンプシュート。……綺麗な流れだった。


「うん。ナイスシュート」


「えへへ……ナイスパスだよ雫」


どうやら2人の中は元から良いらしく、とても良いコンビとなっていた。

その後も第1クォーターは在原さんがパスを出して速水さんが決める。それを繰り返して、8点リードで終えた。


「しーずーくー!さっすがボクの親友!以心伝心!」


「…暑い」


抱き着く速水さんを引き剥がそうとする在原さん。いやー……本当に仲が良いんだろうな。


「とりあえず裕喜、第1クォーターは持ったな。このまま前半は……」


「も、無理ぃ……動き回って……疲れたぁ」


ダメだこりゃ…。完全にガス欠。今の彼方を出せば、実質4対5みたいなもんだ。さすがにこの状態で出し続けることは出来ないと分かっているのだろう。


「青木、出れる?」


「え、は、はい。出れます」


「じゃ、裕喜とチェンジ。あ、あと葵も俺とチェンジな」


……え?茜下がるの?

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