第40話 ちろるは、バカップルみたいな事をおねだりする。
高校の最寄り駅に到着したことに気づき、俺とちろるは電車を降りた。
「もう着いたか――。ちろると話していると、つい色々話しちゃうな」
「雪ちゃん先輩って、どっちかというと無口ですもんね」
「まぁな。口は是れ禍の門、舌は是れ身を斬る刀なりっていうだろ」
何であんなこと言っちまったんだ……と後悔したことは山ほどある。ちょっとマイナーな好きな漫画の主人公の台詞を真似して言ったら、相手がそれの元ネタ知ってて、すごい恥ずかしい思いをした中学時代。――思い出したくない。
それに言葉は刃物だ。大なり小なり、つい人を傷つけてしまうことがたくさんある。そして傷つけられることだってたくさんある。ちなみに俺の人生では圧倒的に傷つけられたことの方が多い。
人の振り見て我が振り直せ、人にされて嫌なことはしてはいけない。余計なことを言うくらいなら黙っておくのが吉である。
「何ですかそれ? 口は災いの元ってやつですか?」
「まぁそうだな。俺は基本、意味のない会話は嫌いだ。賢者は話すべきことがあるから口を開くのであり、愚者は話さずにいられないから口を開くのである。」
その点、女子ってすげぇよな。最後まで話がぎっしり尽きないんだもの。
(↓先に言っておくが、無論人による)
一部の女子同士の会話を聞いていると、なんで特にオチもなければ、情報量の薄い会話で延々と盛り上がれるのだろうかと単純に驚いてしまう。
しかも話の途中で脱線して、また違う話が始まる。せめて、一つの話ちゃんと完結してから次の会話いきませんか。彼氏の愚痴なら、ちゃんとその問題点をみんなで話し合って、二人の仲が上手くいくような解決策を出してから違う話しません?
「うちの彼氏って全然片づけしないんだよ~」
「あぁ、わかる~。うちの彼氏なんかさ~」
「あ、そうそう! こないだ彼氏とデートで行ったケーキ屋さんがさ~」
「そういえば、駅前に新しいケーキ屋さんできたよね~」
と、こんな風にどんどん別の話題が羅列していく。
連想ゲームじゃないんだから。話題の切り替わる速度が速いってば。
「……うん。俺はやはり女子との会話が苦手だな。」
ちなみにこれは、断じてジェンダー差別発言ではなく、男脳と女脳の違いだと、科学的にも証明されている事実だ。
決して炎上を恐れてるとかでなく、みんなが知っている周知の通説を紹介したまでだ。(女性が男性に何か相談をした際、女性はただ共感を求めるのに対し、男性はつい具体的な解決策を提示してしまうという有名なあれ)
「っでも、私とは結構色々なこと話してくれますよね? ……それって、ちょっと特別感があって嬉しいかも……///」
確かに――ちろるには、つい余計なことまでペラペラ話してしまう。
ってか、ちろるん……顔赤らめて、上目遣いでそういうこというなってば。こっちまで照れるだろうが。
「――あれ? 雪ちゃん先輩も少し照れてます? おっ? おおっ?」
ちろるは腹立つ顔で煽ってきた。あぁ、もう面倒くさい。
「っじゃあこれからは、通学中イヤホンつけて本読んどくわ」
その状態の人に話しかけようとする猛者はそういない。ATフィールド全開の最強装備だ。
「っはぁ!? 何でですか! 断固として会話する気ゼロなのやめてくださいよっ!」
俺がイヤホンを取り出そうとすると、ちろるはその片方を奪ってきた。
「せっかくなら、一緒に聴きましょうよ」
「……まぁ、いいけど。――いや、よくねぇわ」
「えぇ~けちっ!」
思わず流されそうになったが、さすがにそんなバカップルみたいなのは恥ずかしい。あと、ランダム再生になってるから、脳を溶かす有害電波とびまくってるような偏差値ゼロのアニソンが流れる可能性もある。それは先輩としての沽券に関わってしまう。
「ところで、一年の球技大会って種目何なん?」
「女子はテニスと卓球ですよ。私はもちろん、テニスに出ます」
一年生の球技大会は、女子はテニスと卓球、男子はバスケに決まったそうだ。中学時代は軟式テニス部だったちろるんは、当然テニスの方に出るらしい。
男子の種目がバスケに決まったあたり、どうやらリア充しねしね団は、さすがにまだ一年男子を吸収するには至ってないようである。
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